国会は「言論の府」といわれる。言論が尊重され、言論によって国政のあり方が議論されている。しかし、現在の国会の姿は異常である。安倍晋三首相や自民党議員が国会で野次を飛ばし謝罪するという醜態を演じ、日本の政治家から品格がなくなっているとしか言いようがない事態になっているからだ。
国会が「言論の府」であることを勘違いしたのか、衆院の代表質問で過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件などについて質問していた志位共産党委員長対し、自民党の山田賢司議員は「さすがテロ政党」という野次を飛ばした。
続いて安倍首相は、予算委員会で民主党議員が西川公也農水相(23日に辞職)の政治献金問題をめぐる質問中に「日教組はどうするんだ」と自席から野次り、しかも後日の委員会で民主党の前原誠司議員とのやり取りの中で「日教組は補助金をもらっているし、日教組が入っている教育会館から献金をもらっている民主党議員がいる」と発言し、事実無根と分かると、「遺憾で訂正する」と述べ、発言を撤回した。
著名なフリージャーナリストは、これら安倍首相らの言動について「民族差別を叫ぶ団体によるヘートスピーチと同じで、ネット右翼(いわゆるネトウヨ)の発想だ」と分析した。
昨日、農水相をやめた西川氏は、やめる理由について「私がいくら説明しても分からない人は分からないということ」という捨て台詞を残した。新聞の社説では各紙とも「説明責任は果たしていない」と書いているが、西川氏がやめたことで、この問題は藪の中に入ってしまうことになるのだろうか。
西川氏の姿勢もまた品格の低さを物語っている。 そして最近の安倍政権は強引であり、目に余ることが多すぎる。おごり高ぶっているのではないか。それをメディアも容認している。 そんな中で防衛省の動きも危うい。戦前の軍部の政治への介入が戦争へと突き進んだ歴史を反省し、防衛省の背広組が制服組よりも優位に立つとされてきた、いわゆる文民統制(シビリアンコントロール)が危ういという。
この根拠である防衛省設置法12条を改正する動きがあるというのである。これも安倍政権の手法の一環なのだろう。 それにしても、日本も世界もおかしくなりつつある。いや、かなりおかしい。
人類の歴史は興隆と没落の繰り返しだといわれるが、イギリスの歴史学者、アーノルド・J・トインビー(1889―1975)は「どんな高度な文明でもいつかは内部から壊れる。それは内部の慢心によるもので、この歴史は繰り返される」と警鐘を鳴らした。
イスラム過激派の「イスラム国」はムハンマド時代の6世紀への回帰を図ろうとしているという。1500年も前が理想の社会だとすれば、人類は全く進歩していないことになる。紛争や戦乱が相次ぐ世界情勢をみていると、人類の精神的進歩は残念ながら止まってしまった感が深い。