小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1746「魅力に満ちた伝統建築と風景のものがたり」続・坂の街首里にて(6)

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 沖縄在住20年になる友人が、沖縄の建築物と風景を紹介するコラムを書き続けている。過日、その友人に会い懇談した。沖縄の魅力に惹かれて夫とともに本島中部の本部町に移住した友人はすっかり沖縄の人になっていた。  

 友人は馬渕和香さんといい、翻訳家の夫とともに23年前、埼玉県浦和市(現在のさいたま市)から奄美大島に移り住んだ。3年後、奄美大島から本部町のちゅら海水族館近くにある古民家に移り、20年になる。和香さんは沖縄の伝統建築に興味を持ち、既に朝日新聞デジタルに「沖縄建築パラダイス」という30回の連載コラムを書いている。  

 現在は「タイムス住宅新聞(沖縄タイムスの副読紙)ウェブマガジン」に「オキナワワンダーランド」というコラムを2016年4月から月1回のペースで連載、この1月で33回を数えた。コラムの説明には「沖縄の豊かな創造性の土壌から生まれた魔法のような魅力に満ちた建築と風景のものがたりを、馬渕和香さんが紹介します。」とあり、連載されたコラムの取材地は沖縄本島各地に及んでいる。

「世界一小さくてやさしい美術館」(糸満市・6回目)や「石の家に息づく70年前の美術村」(那覇市・17回目)、「生まれ変わった戦前の泡盛屋」(名護市・32回目)等、沖縄に住んでいる人でも気が付かない魅力的な建物や風景、空間を分かりやすい記事と美しい写真で紹介している。  

 もちろん、自宅周辺の本部も登場する。13回目には陶芸家和田伸政さんの工房を紹介した「陶芸の楽しさ 沖縄でふたたび」を、24回目にはベネズエラ生まれで本部町に住む建築家、漢那潤さんが建築した沖縄の気候に適し、台風に耐え、沖縄の材料を使った現代版の古民家である「SHINMINKA」を取材した「21世紀に似合う うちなーやー」を書いている。元々、和香さんは共同通信の英文記者で、建築に詳しいわけではなかった。だが、沖縄で触れた様々な建築物の美しさに惹かれ、気が付いたらこうしたコラムを書くようになっていた。写真についても那覇市在住の写真家の下で1年間学んでおり、連載コラムに掲載されている写真に魅せられる読者も少なくない。  

 和香さんに「いま浦和に戻って生活することを考えられますか」と聞いてみると、「それはできませんね」という返事が戻ってきた。それだけ、私には気が付かない沖縄の魅力があるということなのだろう。コラムにはそうした和香さんの沖縄の建築物、風景に対する深い思いが込められているようだ。(続く)  

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 「オキナワワンダーランド」はこちらから

写真 1、ガンガラーの谷(南城市)のカフェ 2、大宜味ユーティリティーセンター」として使われている旧大宜味村立塩屋小学校。沖縄には目を止める建物・風景が数多い。