小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1581 豪華列車とワンマン特急 JR九州の目指すもの?

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 ワンマンの特急列車がJR九州で運行されていることをある新聞記事を読むまで知らなかった。その記事は宮崎県の地方紙、宮崎日日新聞8月6日付朝刊に「災害時の対応大丈夫か」と題して掲載された「日曜論説」だった。筆者は共同通信宮崎支局の上野敏彦支局長だ。JR九州といえば豪華列車で知られが、その裏でこんな合理化が進行していたのである。  

 上野支局長は6月、東京から新幹線と日豊本線を利用して宮崎に赴任した。大分からは特急「にちりん」に乗ったが、それはワンマン運転で、車掌の代わりに臨時の係員が期間限定で乗車していたという。JR九州は大分―宮崎空港間(213キロ)の特急上下38本のうち、4両編成の15本を今年3月からワンマン化を実施した。経費削減が目的であることは言うまでもない。だが、上野支局長が書いているように、南海トラフで巨大地震が発生し大津波が襲来した場合、運転士ひとりで乗客を無事に避難誘導できるのだろうかと、不安になる。  

 JR九州は今後、宮崎―鹿児島中央間(125・9キロ)でも4両編成特急のワンマン化を計画しているという。乗客数の減少=収入減という背景があるのだろうが、安全対策は二の次としか思えない。  

 JR九州といえばななつ星 in 九州」や「或る列車」という、贅を尽くした豪華列車の運行が話題を集めている。JR東日本の「四季島」、JR西日本の「瑞風」もJR九州に追随した富裕層をターゲットにしたリッチビジネスである。公共輸送が本来の目的のJRのこうした経営姿勢に対し、世界的に進行している所得格差に手を貸し、さまざまな社会病理を生む要因になるという指摘も無視できない。  

 大事故や大災害を取材してきた作家の柳田邦男さんは『終わらない原発事故と「日本病」』(新潮文庫)の中で「21世紀に入ってから、最近にいたるまで、一流と呼ばれる企業が引き起こす事故が相次いでいる。そこには、今の日本の企業と企業人の意識を蝕んでいる危機意識の『構造的なたるみ』という共通の問題が潜んでいる」と警告している。多くの企業で危機意識が欠如した「日本病」が蔓延しているというのである。

 JR九州は大丈夫なのだろうか。同社のホームページの「トップメッセージ」には「JR九州グループが、会社発⾜以来、変わることなく大切にしてきたもの。それは“安全とサービス”です」とあり、「JR九州グループ倫理行動憲章」の「2」にも「安全と安心の提供」という項目もある。しかし、特急のワンマン化はどう見ても、これらの言葉と矛盾する。上野支局長の危惧が杞憂にすぎないことを願うばかりである。

 写真は沖縄・那覇首里から見た夕焼け

 上野さんの記事