小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1578 「長い物には巻かれよ」 守った人と守らなかった人

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「長い物には巻かれよ」という言葉は「目上の人や勢力のある人には争うより従っている方が得である」(広辞苑)という意味だ。官僚の世界で、この言葉を守った人と守らなかった人の2つの例が日本と韓国で最近話題になった。どちらが多くの人に受け入れられるかは、言うまでもないだろう。  

 今朝の新聞には安倍政権を揺るがせた森友学園籠池泰典理事長夫妻が、国の補助金受給に絡む詐欺容疑で大阪地検特捜部に逮捕されたことが大きく掲載されている。しかし、この問題は大阪豊中市の国有地が格安で森友学園の小学校用地として売却されたことが疑惑の中心だ。   

 だが、財務省の理財局長だった佐川宣寿氏は国会答弁で野党側の追及に対し、明確な答弁をせず、事実確認のための記録は残っていないと提出を一切拒否、「長い物には巻かれよ」の姿勢を貫いた。その忠節ぶりが評価されたのか、7月5日付で国税庁長官に栄進した。佐川氏は就任後間もなく1カ月になるが、担当記者に所信を明らかにする就任会見も開いていないという。何を彼は恐れているのだろうか。

 (追記・国税庁は8月8日、佐川氏の就任会見はしないと記者クラブに伝えた。逃げ隠れする徴税の責任者を国民はどう思うだろう)  

 佐川氏と反対の行動をとったのは韓国の官僚である。新しく就任した文在寅ムン・ジェイン)大統領に抜擢された慮泰剛(ノ・テガン)・文化体育観光省第二次官がその人だ。朝日新聞のソウル特派員メモによれば、同氏は文化体育観光部体育局長だった4年前に、前大統領朴槿恵(パク・クネ)氏の支援者、崔順実(チェ・スンシル)被告の娘が乗馬大会で優勝できなかった際、審判のやり方に疑問があると調査を命じられた。しかし「政府が介入するのは不適切だ」という報告書を出したため朴氏から「悪い人」という指弾を受け、更迭された。  

 朴氏の逮捕、政権交代によって、慮氏は平昌冬季五輪の文化行事担当に返り咲いた。この記事には、「抱負を語る慮氏の表情は思いなしか、不当な要求に屈しなかった公務員の誇りが見えた」と記されている。    

 森友学園問題に続く加計学園疑惑では、前文科事務次官前川喜平氏が「行政の在り方が歪められた」と主張、安倍政権にとっては「悪い人」扱いになっている。一方、国会で「記憶にない」を連発する官僚も目に付く。その評価は、最近の内閣支持率急落につながっていることは間違いない。