小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1393 「現代を憂え、戦後をかみしめる」 ある句会にて

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 何度も書いているように、今年は戦後70年である。この間、日本は平和を享受してきた。だが昨今、政治の世界では国の防衛について、大きな進路変更を迫る動きがあることはご承知の通りである。そんな政治とは別にして、今年の戦没者慰霊式典で天皇は「さきの大戦に対する深い反省」という言葉を述べ、日中戦争・太平洋戦争に対する明確な姿勢を示した。

 そんな中で同好の士による句会が開かれ、兼題の一つである「終戦記念日終戦日、敗戦忌」についての句が披露された。現代を憂い、戦後70年をかみしめる思いの句会だったと、私は受け止めている。 それを以下に紹介し、句会で出た感想「部分」と私の感想《部分》を記してみる。(もう一つの兼題と季題は省きます)

 1、敗戦忌平和が縮み古希迎ふ 「時節にあった句であり、戦後70年と古希を重ね合わせがいい」 《安保法制が論議される中で、多くの高齢者の思いが伝わる》

 2、ルビコンを渡った悔やみ敗戦日 「ルビコンを出したことに意味がある=ルビコン=間違った判断で日本は破滅への道を進んだ」 《軍部を止めることができなかった国民の自省が読み取れる》

 3、終わったよ母つぶやきし敗戦日 「子規の句『毎年よ彼岸の入りに寒いのは』を彷彿とさせる平易な句」 《女性は戦時中どれほど辛い思いをしたか、母や姉から聞いている。女性の実感といえる》

 4、「昭和天皇実録」を読む終戦日 「天皇と戦争とのかかわりを感じさせ、あらためてあの戦争は何だったのかを考える」 《映画『日本のいちばん長い日』との関連が浮かび上がり、作者の終戦日の過ごし方が伝わってきた》

 5、わだつみの声よ届けと終戦日(私の作) 「学徒出陣で戦死した人たちの声が聴きたいという、現在の世相を表している」

 6、漱石の初句出でにけり終戦漱石の未発表の句に『花の朝 歌よむ人の 便り哉』があるという。作者は終戦日に松山を旅し、この句に接したのだろう。HNKドラマ『花子とアン』で話題になった柳原白蓮漱石はつながりがあったという。白蓮からの便りをもらい、浮かんだ句のようだ。なぜ、発表しなかったのかは分からない》

 7、生き様をさて如何せん終戦日 「8月15日は区切りの日、生き方を考える日でもあることを実感する」 《自身のこれまでを振り返り、恥多き人生だったことを突かれた思い》

 8、終戦忌若者たちの声確か 「時事俳句であり、SEALDSの活動が浮かび上る」 《写真家の藤原新也は現代の若者を『抜け殻』と評した。だが、気骨ある若者もいることが心強い》

 

 写真は長崎・平戸城(記事とは関係ありません。この城は戦後の1962年に復元されました)

1396 子規の9月 トチノミ落ちて秋を知る 

これまでの句会の記事

1211 雛祭り終え菜の花の季節 ある句会にて

1343 春をどう感じるか 手賀沼よよみがえれ