小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1167 地球温暖化への強い警鐘 フィリピンの台風被害・COP19の比代表の演説

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 フィリピンを8日超大型台風30号「ヨランダ」(アジア名ハイエン))が直撃、死者は1万人を超えるという情報もある。被害が大きかったレイテ島は、東日本大震災の大津波を思い出させる惨状が広がっている。

 折しも、ポーランドワルシャワでは気候変動に関する国連枠組条約第19回締約国会議(COP19)が始まった。この会議でフィリピンのナドレブ・サニョ(Naderev Sano)代表の「涙の演説」が注目を集めたという。持ち時間の3分を大幅に超える17分の演説は、地球温暖化へ強い警鐘を鳴らすものだった。

 今年の日本列島は、異常気象が常態化したといえるほど荒れた天気が続いている。サニョ代表の訴えは、全世界の人々が耳を傾けるべき重い内容だった。 サニョさんは、演説の中で台風30号がもたらした異常気象は狂気であり、ワルシャワでこの狂気を止めなければならないと訴え、自身もこの会議の期間中、断食することを表明した。

「私たちはただ座視しているわけにはいかない。声を上げることができずにいる数えきれない人々、この惨劇で孤児になってしまった子どもたち、そして今、生存者を救出し苦痛を和らげるために時間と闘っている人々を代弁して話したいのです」という、サニョさんの演説の概略―。 

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 地球温暖化対策で合意できなければ(これからの人類は)悪い運命と契約を結んでしまうことになるかもしれません。食べる物を求めて格闘しているフィリピンの同胞のために、私は地球温暖化対策が講じられることを求めて自発的に断食を始めます。22日までの「COP19」で意義のある結果が導き出されるまで食事を断つことを意味しているのです。

 フィリピンが経験した台風は狂気であり、異常気象は狂気なのです。人類は直ちにこの狂気をワルシャワで修復し止めることができるはずです。ハイエンのような台風に伴う悲劇は温暖化対策が引き延ばせないことを国際社会に突きつけているのです。

 科学者は、気候変動により今後、強力な台風が増えると予測しています。地球の温暖化によって海洋の温度も上昇し、その結果フィリピン沖の海洋に蓄えられたエネルギーによって発生した台風は脅威を増し、これまでの現象より破壊力のある嵐が普通になってしまったのです。 気候変動という現実を否定する人に、私は海面上昇の現実を太平洋、カリブ海、インド洋の島々に連れて行って見せてやりたい。

 溶け出した氷河による洪水にさいなまれる共同体を見せるためにヒマラヤやアンデスの山脈に連れて行き、北極海の氷がどんどん溶けている状況を見せてやりたいと思います。こうした破滅を防ぐための先進国の温室効果ガスの削減目標は不十分なのです。直ちに目標を上げなければ、気候変動に歯止めはかかりません。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 報道によると、いまフィリピンの被災地には救援物資が満足に届かず、被災者たちは飢餓の苦しみを味わっている。そして、商店に対する略奪も起きているという。サニョさんが語るように、温暖化対策は先延ばしにはできない全地球的緊急課題なのだ。

 温室効果ガスの削減問題では、2009年9月、当時の鳩山由紀夫首相が国連気候変動サミットの開会式で「日本は、2020年までに90年比で25%削減するという国際公約をする大演説をした。しかし、この国際公約はその後雲行きが怪しくなっていることはご承知の通り。日本政府はフィリピン代表の訴えにどう応えるのだろう。

(台風30号に関連しては、世界銀行のジム・ヨン・キム総裁もサニョさんの演説を肯定する発言をしたことが報道された。ワシントン発のAFPによると、キム総裁は12日、「過去1年の間に起きた嵐の数とその過酷さ、そしてこれら異常気象が観測される頻度の増加。このような状況は、科学者らが予測してきた気候変動そのものに他ならない。

 フィリピンを直撃した台風の被害を目の当たりにして、我々は科学とは言えないような愚かな議論をやめることを願う。前に進むために必要な投資を行うべきだ」と述べたという。これは台風30号によるフィリピンの甚大な被害が、温室効果ガスに関する気候変動の有無を問う愚かな議論を終わらせることにつながるとの見通しを示したものだという)

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写真 1、立冬が過ぎて遊歩道の街路樹も色づいた。2、皇帝ダリアの花が咲いた。なぜか今年は格別に背が高い。