小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1166 三日月と金星の天体ショー 天は悪事を知っている

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きょう11月7日は、二十四節気のうちの「立冬」だ。同じ二十四節気の「霜降」(そうこう)から15日目ごろというが、わが家周辺ではまだ霜が降りる気配はなく、散歩をしていたら汗ばむほどだった。昨日の夕方、西の空を見上げていたら、三日月が右側に、左側に明るい星が浮かんでいた。その星は金星で、カメラを向けたら、偶然両者の間に飛行機が写っていて、面白い構図になった。昨日より早い時間に西空を見ると、月が上で金星が下になっており、そのさらに下を飛行機が飛んでいた。 金星は、太陽と月に次ぐ明るさを持つ天体だという。その明るさと美しさから、ローマ神話では愛と美の女神「ヴィーナス」(英語表記Venus)を司る星といわれている。明るく輝くこの星と三日月を見ていて、「天知る、地知る、我知る、子知る」という故事(中国後漢時代の歴史書後漢書)を思い出した。だれも知る者がおらず、2人だけの秘密にしようと思っても、天地の神々も知り、自分も相手も知っているのだから、不正や悪事は必ず発覚する、という意味だ。 全国のホテルやデパートで、別の安い食材を使ったのに高級食材だと偽る「食材偽装」が相次いで表面化している。阪神阪急ホテルグループ以来、次々にホテルやデパートが記者会見し「誤表示でした」という発表をしている。隠しておくことよりも、騒ぎの渦中に発表してしまった方が、マスコミの集中砲火を浴びず、いわば「みんなで渡れば怖くない」という感覚なのかもしれない。 それにしても、昨今のこうしたニュースを見ていると、もうけるためにはうそをついてもいいという考え方が日本社会にまん延しているように感じてしまう。東日本大震災当時、苦難な状況に耐え、冷静に対応する日本人に対し、外国から称賛の声が寄せられたが、こんなニュースが相次ぐと、日本人は信用できない民族だと受け取られても仕方がない。 「近江商人」(滋賀県)の商売哲学に「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」という考え方があるそうだ。「売り手の都合(利益優先)だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献する」という、商取引の基本を示したものだろうが、この言葉自体が死語になってしまったのだろうか。   ウィキペディアを見ていたら、近江商人の流れをくむとされる主な企業のトップに、テナントのレストランで食材偽装が発覚した百貨店の高島屋が出ていた。182年前に創業された同社の経営理念は「いつも、人から。」だそうで、ホームページには「『人を信じ、人を愛し、人につくす』こころを大切にし、社会に貢献します」とも書いてある。たぶん、同社以外のホテルやデパートも似たような経営指針を持っているのではないか。それは、ブラックユーモアのように思えてならない。
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写真 1、昨日の月と金星 2、今夜の三日月とヴィーナス