小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1116 社会福祉士になった74歳の知人 北海道の旅にて

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 高齢化社会である。周囲を見渡すと60歳を過ぎても継続雇用で働く人が大半だ。札幌で暮らす知人は現在74歳。悪名高い名称の「後期高齢者」まであと1年なのだが、最近「社会福祉士」という福祉の3大国家資格(他の2つは精神保健福祉士介護福祉士)の1つの試験に見事合格した。

 6月3日、月曜日からは札幌市内の小学校で「学びのサポーター」として、子どもたちに接するボランティア活動を始める。

 北海道に行ってきた。この季節、北海道は花の季節を迎えていた。どこでも黄色い花の「西洋タンポポ」がわが世の春をうたっていた。もともとこの花は、1904年に札幌農学校(「少年よ大志を抱け」のクラークが在籍した北大の前身)に教師としてやってきたW.P.Brooksが野菜として持ち込んだといわれている。

 それが全国に広がったのだろうか。少し前のブログに書いた鎌倉・称名寺黄菖蒲と似ている。それでも、緑の草原にこの黄色の花はうまくマッチしているのだ。どこに行っても、この花は私を歓迎してくれているように感じたほどだ。

 74歳の知人に戻る。知人は北海道のある新聞社の記者を経て常務をやり、67歳で新聞社をやめた。そのあと介護タクシーの免許を取り、障害者施設の移送車の運転手のボランティアを続け、2012年からは1年間、社会福祉士の専門学校に通った。そして、合格率18・8%(第25回)という社会福祉士の難しい関門を突破した。

 社会福祉士は、ソーシャルワーカーともいわれ、保健・医療、福祉だけでなく教育(スクールソーシャルワーカー)や更生保護の分野でも求められている人材だ。知人は小学校で発達障害の子どもたちの学校生活をサポートするスクールソーシャルワーカーとして週3日、通うそうだ。

 知人とは、私が札幌に住んでいた当時、公の面でも付き合いがあった。それだけでなく、私の朝の散歩コースに知人は車でやってきて、2人で小一時間雑談をしながら歩いた。在職中から、仕事をやめたらボランティアをやると言っていた通り、その思いを貫き、しかも難しい国家資格まで取得したのだから、ただものではないと思う。

 知人はとても74歳には見えない。知らない人は60歳そこそこかと思うかもしれない。この知人と札幌駅から大通まで新しく開通した地下街を歩いた。広々としたこの地下道は、汗が噴き出る夏、酷寒の冬だけでなく、一年中市民の通り道になるに違いないと思った。 早朝、大通公園を1時間ほど散歩した。

 この公園は札幌に住んでいた当時、歩いて通勤した懐かしいコースだった。5月末とはいえ、大倉山には雪が残り、公園外れのバラ園のバラはまだつぼみの状態だった。北海道の初夏はこれからだ。そして知人は、明日から新しい挑戦の日々が始まる。

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