小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

645 6年ぶりに戻った中学校の表札 盗難の果て海岸で発見

 明るい話題なのかどうか、区分けが難しニュースを紹介する。娘が卒業した公立中学校の木製の表札(標識)がなくなったのは、2004年末のことだった。

  それから約6年が過ぎ、最近、町内会の回覧版で「看板(表札)帰還についてのご報告とお礼」という知らせがあり、表札が戻ったことが分かった。表札は少しだけ修繕して元の位置に掲げる予定だそうだ。

  横長の表札は、ある日、そっくり盗まれ、中学校側が警察に盗難届を出すとともに、保護者や地域の町内会に呼び掛け、その行方を捜した。しかし、手掛かりがないままに時間が経過していった。中学校の報告によると、最近、千葉県白子町の九十九里海岸付近の住民から「4月中旬に浜辺に打ち寄せられていた表札を発見し、保管している」という連絡が入り、学校側が受け取りに出向いたという。

  状態は「長期の風雪に耐えたとは思えないほど良好」だという。盗まれた表札がなぜ6年も過ぎて、九十九里海岸に打ち寄せられたのかは不明だ。だれかがいたずら半分に盗んだものの処分に困り、海に棄てたものが打ち寄せられたのだろうか。

  以前、駅の駐輪場で盗難に遭った娘の自転車が表札と同じように6年を経て返ってきたことがあった。高校入学の祝いにプレンゼントしたものだが、数日乗っただけで盗まれてしまい、娘の落ち込みはひどかった。それから6年後、市役所から盗難した自転車を保管しているという連絡があり、ボロボロになった自転車を引き取った。

  汚れをきれいにふき取り、タイヤも直したが、なぜか、その自転車も数カ月で再盗難に遭ってしまった。娘とは縁の薄い自転車だったのかもしれない。

  中学校の表札は、間もなく以前と同様門扉わきに掲示されることになった。二度と盗まれないよう強力な接着剤で固定されるはずだ。盗んだ犯人は、この中学校の前を通る度に、心が痛んだのではないかと想像する。

  しかし、よく戻ったものだと思う。この6年、この街も日本もあるいは世界もだいぶ変わった。これからも時代の変化は激しいはずで、子どもたちにはどんな未来が待っているのだろう。そんな時代だからこそ、元に戻った不思議な表札に子どもたちの成長ぶりを末長く見守ってほしいと思う。