小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

581 うんざり政治とカネ 自浄能力欠如の政界

 いま、日本の国家財政は危機的状況にある。だが、昨今の鳩山首相、小沢・民主党幹事長の政治資金をめぐる一連の問題をみていると、政治家は金持ちが多いために国家財政の危機にも鈍感なのかもしれないと思ったりする。

  2人は「打出の小槌」を持っているようだ。鳩山首相の場合は、それが母親だった。毎月、私たちの年収以上の大金をもらっていて、それが8億円にもなった。それでも「知らなかった」という言い分が通ってしまった。

  一方、小沢幹事長は東京・山手の土地を買うのに、4億円ものカネを現金でポンと出した。本人の弁によると、蓄えてきた個人資産を銀行から引き出したもので、何らやましいところはないという。しかし、検察はこれを疑い、秘書や側近の議員の逮捕に踏み切った。

  自民党に代わって、清新な政治が期待された民主党の幹部の2人が、「カネ」の問題で大きくつまずいた。日本の政治は、どうなっているのか。

  小沢幹事長の政治資金に絡む検察の捜査に対しては、様々な憶測が流れている。「小沢つぶし」を狙っての国策捜査だという指摘や、政治を官僚主導から政治家主導に戻そうという民主党と官僚機構との「戦い」だという説もある。公然とそれを言う民主党の議員もいる。検察の動きを見ていると、そういう見方を完全に否定はできない。

  ここで私は「うーん」と、うなった。

  鳩山首相は、16日に小沢幹事長と会った際、「法に違反していることはないので、幹事長をやめるつもりはない」という話を聞き「幹事長を信じている。どうぞ戦ってください」と述べたと報道されている。首相は行政の長である。当然、検察もその管轄下に入るわけで、絶大な権力を持つ小沢氏相手でも、政権を持たない政党の党首ではないのだから、こういう物の言い方はおかしい。

  2回目の「うーん」である。

  小沢氏の力の背景には、何があるのだろう。昨年の選挙で多くの新人議員を当選させた。昨年12月は、143人もの民主党議員を引き連れて訪中した。ことしの新年会には、やはり閣僚や議員166人が出席したという。豊富な政治資金がその源泉の一つかもしれない。しかし、検察の動きによってその力は半減するか、それ以下になる可能性もある。

  小沢氏と検察の攻防について「最後の戦い」という表現が使われている。たしかに、双方とも必死のはずだ。小沢氏にしてみれば政治生命の危機だし、検察にすれば、この捜査がとん挫した場合の影響は計り知れない。

  首相が「戦ってください」という以上、尻つぼみで終わった場合、検察に対しての風当たりは強まることは間違いない。

  田中、竹下、金丸と続いた自民党大物政治家は、カネの問題で失脚した。その系譜にいる小沢氏もいま、土俵際まで追い込まれた。日本の政界の「ぬかるみ」は、どこまで続くのか。昨年の総選挙で自民党を圧倒した民主党に対しては、政治の変化を求めた国民が多かったはずだ。だが、これでは自民党時代と変わらない。

  3回目の「うーん」だった。

  この攻防がこれからどういう展開になるのか。駆け引きは続いている。こんな時代に思うのは、日本政界に坂本龍馬のような、先を見通す能力を持った「救世主」が必要だということだ。それが無理なら、せめ政界に「自浄能力」だけは発揮してほしいのだが・・・。