小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

562 みんなで渡れば怖くない 日本人の集団行動

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉がある。映画監督の北野武が若い時代に漫才をやっていた当時のネタの一つだそうだ。ブラックユーモアとして、流行語にもなった。日本人の集団行動を皮肉った標語でもある。

  知り合いの南米出身の日系2世と話をしていたら、「日本人は集団意識が強い。悪く言えば、集団行動に流れやすい」という辛口の日本人評を聞いた。そうなのか、と考えた。

  日本への留学経験がある中国人男性の「日本人は集団主義だ」と指摘しているブログを読んだことがある。一方、中国は「個人主義」が伝統で、その背景には広大な面積と12億以上の世界1の人口、周囲に多くの異民族の国が存在するという事情があり、中国人は他者よりも自分が優位に立つかを常に考えているというのだ。

  日系2世の青年は、こうも話した。「みんながやっているから、私もやらないといけないと思っている人が多い。団体行動に流れやすいと思う」。それを見事に表したのが冒頭の北野武の言葉である。熱しやすく冷めやすい国民性でもある。ある一つの事象に熱狂し、集団ヒステリー症状を起こす。

  いま、日本の国家財政は、長年の国債の乱発で財政赤字が1000兆円に近付きつつある。2009年度の税収は、経済事情の悪化で当初の46兆円の見通しを大きく下回る37兆円程度しかないため、その穴埋めに過去最悪の50兆円もの国債を発行せざるをえない状況だという。

  バブ経済に踊ったあと、バブル崩壊後の日本は赤字国債に頼り「みんなで渡れば怖くない」式の、責任を先送りする借金国家の道を歩んだ。個人や民間会社なら、とうに破産や倒産に追い込まれている。

  ピースボートで世界一周をしたこともある日系2世は、一緒に旅をした同世代の日本の若者について「生きがいを持たず、命の大事さを感じていない人が目についた」と、印象を話してくれた。そんな若者たちは、他の人がやるから私もやるという横並び意識に流されてしまうから「日本人は集団主義」といわれるのだろうか。

  私自身、実は集団行動が苦手だ。かつて「一匹狼」的な動きに憧れたことがある。しかし実践は難しいまま、歳月だけが流れてしまった。