小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

557 ああ「火車」状態 どうする鳩山さん

画像 父親の借金から、不幸を背負った女性が他人になりすまそうとする悲劇を描いた宮部みゆきの「火車」を再読した。この作品を読んで、日本自体が「火車」状態にあることを思い知らされた。 最近の新聞やテレビの報道によると、本年度2009年度の一般会計の税収は、当初予算に計上した約46兆1千億円から8兆円下がって38兆円前後に落ち込んでしまうというのだ。

 輸出を中心とする日本の企業の多くは、ほぼ壊滅状態といっていいほど業績は最悪だ。その結果、法人税は予定した半分の5兆円台しか見込めないという。カネもないのにいろいろな面で大盤振る舞いした自公政権時代の予算(一般会計)の総額は過去最大の88兆5480億円である。

 政権交代麻生内閣からバトンタッチした鳩山民主党政権は、税収不足の穴埋めに国債という「カード」を利用し、その借金が増えていく。その額は本年度だけで50兆円を突破するかもしれない。政治家も官僚も、だれもが責任を感じないままに、借金財政の解決をしないで先送りを続けたツケがたまりたまって今日の窮状になっているのである。

 こんな難しい時代の日本のかじ取り役の鳩山首相は偽装献金で、連日たたかれている。9億円もの大金を母親から提供を受けていたことが発覚した。要するに、普通の人たちと比べ、お金に困ったことはない鳩山家の御曹司なのである。だから、政治資金収支報告もいい加減で、つつかれれば次々に問題が出てくる。 それでも朝日新聞によると、首相は不起訴処分になる見通しだというから、今夜は鳩山首相も胸をなでおろしているのかもしれない。

 もろもろの情勢を考えると、東京地検特捜部も政治判断せざるを得なかったのかもしれない。 宮部の「火車」は、事件を追っていて負傷し休職中の警視庁捜査一課の刑事が、身内に頼まれて失踪した女性を探すうちに女性のつらい過去が浮かび上がる。宮部の会話を軸にしたストーリー展開にはいまさらながら感心する。 刑事は、最終的にこの女性の行き場所を突き止める。

 では、鳩山さんはこの刑事と同じように日本経済の「病弊の根源」を突き止め、処方箋をつくることができるのだろうか。極めて困難な作業である。だが、それなくして日本の未来は暗いままだと思う。