小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

755 政治家や官僚は子どもの顔をちゃんと見られるか 武士の家計簿と政府予算案

画像 2011年度の政府予算案が閣議決定した。一般会計の総額は92兆4116億円で本年度の当初予算を1124億円も上回って過去最大だという。

 問題は内訳だ。税収が3兆円超の40兆9270億円の見込みなのに対し、国債発行額はこれよりかなり多い44兆2980億円で、本年に続き借金(国債)の方が税収を上回っているのだ。

 最近、映画の「武士の家計簿」を見た。幕末の加賀藩(石川県)御用算者(現在の地方自治体の会計担当者)の8代目の猪山直之が膨れ上がった家の借金返済のために耐乏生活を送り、清算する物語だ。 この中で猪山役の堺雅人の言葉が印象に残る。耐乏生活を問われ「私は生まれてくる子の顔を真っ直ぐに見ていられる親でいたい」というのだ。

 この言葉を聞いていて、はたして現代の政治家や官僚は猪山のように、子どもの顔を真っ直ぐに見ることができるだろうかと思った。 何しろ現代のように税収が期待できない時代に関わらず、政府は過去最大の予算案を決定する。

 そこには「家計簿意識」は全くない。「家計簿」という表現に異を唱える人があるかもしれないが、やはり今度の予算案はおかしい。 長い間、自民党政権赤字国債を発行し続けた。個人家庭ならば考えることができない「無責任」ぶりである。

 そうした轍を民主党政権は踏まないと思っていたが、そうではなかった。現代社会論の芹沢一也さんは、民主党政権が失敗した原因として「弱者を救う」というストーリーにあったと指摘している。(12月24日朝日新聞耕論)

 デフレ状況下最優先すべきは景気回復だったはずなのに、民主党は「小泉構造改革が切り捨てた弱者を救うという誤ったストーリーに縛られて、規制強化と再分配に走ってしまった」と分析している。 再分配というのは、要するに「ばらまき」だ。民主党鳴り物入りでやった「事業仕分け」の効果もそう大きくない。

 猪山のような人物が現代の政府、官僚にも出てほしいものである。「武士の家計簿」は、赤字を膨らませ続ける政府に対する警告と受け止めていい。