小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

498 台風一過歯痛も去る 立秋が過ぎた朝に

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 台風9号が去って、関東地方は夏空が戻った。この数日、荒れた天気と同じく気分がすぐれなかった。その原因は、急に歯が痛くなったからだ。 8日の「東京湾大華火祭」見物までは体調はまあよかった。しかし、翌日から右下の親知らず歯が痛んできた。「台風が来ると、歯が痛くなることがある」というが、それを実証したことになる。

 月曜の10日、起床すると歯の痛みはひどく、朝食を取ろうにも、痛みで食べ物をかむことができない。外は猛烈な雨が降っている。台風が関東に近付いてきたのだ。以前から通っている歯科医院に駆け込むと、歯医者からは「台風が来ると、気圧が急に下がってくるので、歯が痛くなる人が結構いますよ」と説明された。

 痛む部位をレントゲン撮影し、抜いた方がいいといわれ、抜歯手術を受ける。 麻酔がなかなか効かずに、医者も苦労している。器具を当てるだけで飛び上がるほどの痛みが走る。歯医者でこんなに痛い思いをしたのは初めてだ。

 台風と歯痛の関係をもう少し詳しく書くと、低気圧は歯の神経を刺激し、虫歯などで弱った部分が痛くなるのだそうだ。歯にはエナメル質部分があるということを聞いた。そのなかの空洞と外気圧との違いが大きいと、歯が痛くなる。飛行機でこれを経験する人も少なくないという。

 私の場合は、たまたま弱っていた部分が台風という引き金によって急激に動き出した結果、ものを食べることもできないほどの痛みを引き起こしたといえる。 立秋が過ぎた。このころの気候を「涼風至」(涼しい風が立ち始める)というのだそうだ。

 台風一過、歯の痛みが消えてきたので、早朝、犬の散歩に出た。コースにある小さな調整池近くにある雑木林からは涼風が吹いてきて、心地いい。これまでは荒い息を吐きながらいやいや歩いていた犬も元気を回復し、リードを引っ張りながら早足で歩く。あれほどうるさいほど鳴いていた蝉の声も、少し静かになったような気がする。

 古今和歌集藤原敏行は「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(秋が来たと目にははっきりと見えないけれども、風の音にはっと気づいた)と詠っているが、同じ思いを抱いた夏の朝だ。