小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

408 落書き天国日本 姫路城も被害とは

 日本人は落書きが好きなのだろうか。関西に行く機会があり、地元の神戸新聞を読んだ。その中に姫路城の落書き問題に姫路市が頭を痛めているという記事が載っていた。姫路城は世界文化遺産であり、国宝だ。その日本の宝である姫路城の大天守内の柱や西の丸の「百間廊下」の壁、柱などに人の名前、ハートマークが掘り込まれていたという。

  日本の観光名所に行くと、あきれるくらい落書きが目に付く。旅先で日本人は「旅の恥はかき捨て」とばかり公徳心を捨てて、こうした落書きをしてしまうのだろうか。姫路城の落書きの記事に続いて、ニューヨークの地下鉄の駅に落書きした日本人美術家、奈良美智氏が逮捕されたという記事が載っていた。

  奈良氏は「逮捕されて拘置されなければ会えないような人に囲まれ、映画の中にいるような体験だった」と話したという。罪悪感はないのだろう。イタリアのピサの斜塔フィレンツェ市のサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂での日本人による落書きが問題になったことがある。

  そんなところに自分や恋人の名前を書いてどう思うのだろう.。日本人は奈良氏を含めてことわざ通りの習性が捨てきれていないようだ。

  落書きを芸術視する見方もある。しかし商店街のシャッターにペンキで描かれた個性のない落書きを見ると、気持ちが悪くなる。東京の下北沢商店街では、シャッターへの落書防止のために公募形式でシャッターに絵を描いてもらうという対策をとったことがある。

  しかし、姫路城のような文化財ではそうは行かない。神戸新聞に掲載された「百間廊下」の板戸の落書きの写真は無残だった。板戸に漢字やカタカナで名前が何ヵ所も書かれている。

  今度の旅で、姫路に隣接する加古川に行った。その帰りに姫路から新幹線に乗った。時間があれば、姫路城を再訪したいと思った。だが、この落書きの記事を見てその思いが失望に変わり、予定より早いのぞみに変更して帰京した。落書きされた文化財を見て、腹を立てるよりは見ない方がまだいい。