小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

115 挫折から栄光へ ザ・ウィンザーホテル洞爺

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 来年8月に日本で開かれる主要国首脳会議(サミット)の開催地に北海道洞爺湖町が選ばれたというニュースを知って、あのホテルかと、複雑な思いが去来した。洞爺湖に向かって、車を走らせていると、山の上に巨大な「お城」のような建物が目に入る。それがサミット会場になる「ザ・ウィンザーホテル洞爺」である。

 このホテルは、バブルの象徴といわれ、バブル崩壊後閉業に追い込まれ、建築時の10分の1の価格で譲渡された。営業が再開され、超高級のリゾートホテルとして、国内にも浸透しつつあるのが現状だ。 各新聞にも報道されているが、このホテルは地上11階、地下1階建てだが、洞爺湖を見渡す標高656㍍の高台にあり、白い西洋の古城を思わせる威容はかなり目につく。

 札幌の不動産会社「カブトデコム」と後に破綻に追い込まれた「拓銀」が協力して建築を進め、1993年6月に開業した。 660億円ともいう建築費を投じ、会員制高級ホテルとしてスタートしたものの、利用客は集まらず、結局98年営業を中止、警備保障のセコムグループに約60億円で譲渡され、2002年6月から営業を再開したいきさつがある。

 富裕層向けのホテルとして売り出し、1泊10万円近いが、料理も最高級といわれ、洞爺湖を見下ろす立地条件にも恵まれ05年度からは黒字化も果たしたそうだ。 こんなホテルだが、庶民には高嶺の花だ。北海道民でどれだけの人が利用したかは分からない。今回、洞爺湖が選ばれた理由、背景についていろいろな論評もある。

 しかし、北海道の宣伝にはなるだろう。しかも、一度挫折したホテルが、サミット会場に使われるという栄光をつかんだのは、ある意味では「奇跡」といえるかもしれない。 このホテルが営業再開する直前、洞爺湖温泉に泊まり、帰りにホテルの建物に目を奪われて、つい高台のホテル近くまで車を走らせたことがある。

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 建物の周囲にはゴルフ場が併設されていて、芝生の緑が一際目につく。駐車場からは眼下に洞爺湖が広がり、その左側の後方には富士山によく似た羊蹄山の雄姿が見える。やわらかに吹く風が頬に心地いい。この景色を売り物にするのは、たしかにアイデアである。世界の要人たちもこの景色を見れば、少しは気が休まるかもしれない。