小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1252 沖縄の建築物の魅力を追う 「小さな宝石のような風景」を連載

 

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 沖縄暮らし15年になる友人が南の島の建築物に魅せられ、朝日新聞のホームページ「朝日新聞デジタル」で「沖縄建築パラダイス」と題した連載を続けている。ことし1月から始まった連載は既に14回を数え、個性豊かな建築物を通して沖縄の魅力を伝えている。50回まで続けるのが目標というから、これからも私たちが知らないユニークな建物が記事になるかもしれない。

 この連載の筆者は沖縄県本部町に住む馬渕和香さんといい、元共同通信社英文記者で翻訳家である。筆者紹介には「初めて訪れた沖縄島のヒトとマチに恋をして1999年に移住。以来15年間、素朴で飾り気はないものの沖縄のエッセンスがギュッと詰まった小さな宝石のような築半世紀のカーラヤー(瓦家)に暮らす」とあり、さらに「建築に興味を持つようになったのは、雑誌で見たファンズワース邸に感動したのがきっかけ。好きな建築家はジェフリー・バワ、そして沖縄の素敵な風景を作り上げてきた無数の名もなきアマチュア建築家たち」と出ている。

  初回に取り上げたのは、米軍普天間基地の移設が問題になっている辺野古がある名護市の市庁舎だ。「テラスにそよぐ自治の理想『名護市庁舎』という記事には、1981年に集落の人々が集い交流する場でもあるアサギを「沖縄の建築の原点」と考えたTeam・Zoo(象設計集団+アトリエ・モビル)の設計で建設された―とある。

 さらに「庁舎の天井を南北に走る『風のみち』と呼ばれるダクトは、大規模な空調方式に頼らない庁舎を求めた市の意向に沿って取り付けられた」こと、「車椅子でも屋上まで登ることができるスロープも、社会的弱者に配慮を、という市の注文をTeam・Zooが建築的に表現したもの」であることなど、建築の思想、狙いが紹介されている。

  私も名護を訪れた際、この建物を目にしたことがあるが、このような事情は全く知らなかった。記事には市庁舎の特徴が以下のように記されている。

 「沖縄よりさらに南方の古代遺跡を思わせる庁舎を、たっぷりと広い大広間のようなテラスがいくつも連なりながら包んでいる。アサギテラスと呼ばれるその半屋外空間には、人々の語らいの残響が染み込んだテーブルや椅子が所々に置かれている。テラスをすっぽりと覆う巨大なルーバー状の屋根から、木漏れ日のような光が降りてくる。

 よく手入れされた色とりどりの鉢花を眺めながらテラスをいくつか通り過ぎると、訪問者を手招きするかのようにスロープや階段が現れる。誘われるままに庁舎の外縁を散策していると、秘密の迷路にでも迷い込んだように思えてきて、ここが市役所であることを忘れそうになる」

  海外には公共の建物でも足を止めさせるものが少なくないが、日本の役所関係の建物は没個性なものがほとんどだけに、名護の市庁舎は珍しい存在だ。普天間移設をめぐって、これからこの庁舎がテレビに映し出されることが多くなるのかもしれない。

  2回目以降の連載は以下の通りだ。沖縄を幅広く知りたいという人にとって必読の記事である。写真は筆者の感覚の鋭さを思わせ、これもまた味わいがある。

 

 2、浦添市の港川外人住宅街(港川ステイツサイドタウン)

 3、恩納村のホテルムーンビーチ、

 4、今帰仁(なきじん)村の崎山共同売店

 5、与那原町の聖クララ教会

 6、那覇市の栄町市場

 7、北中城村の中村家住宅

 8、浦添市のA&W牧港店

 9、本部町の熱帯ドリームセンター

 10、琉球大学・風樹館など金城信吉の建築物

 11、那覇市福州園

 12、沖縄市八重島のコーヒーハウス響

 13、大宜味村の旧大宜味村役場

 14、南城市玉城の仲村渠樋川

   沖縄建築パラダイ

  写真は、沖縄の民家。白い瓦屋根とすだれが涼しげに見える。