小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2063 群馬は魅力がいっぱい ランキング下位でも

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 時々地図を取り出して、見ることがあります。日本地図だったり、世界地図だったり、その時の気分によって変わりますが、地図を見ることは楽しみの一つです。先日「都道府県魅力度ランキング」が発表になり、茨城県が最下位の47位、群馬県が下から4番目の44位(昨年は40位)になりました。群馬県の山本知事はこの結果に怒り、法的措置をとるかどうか検討すると発言しました。それほど群馬県は魅力がないのでしょうか。地図で群馬を見てみました。

 私はこれまで全47都道府県に行ったことがあります。各都道府県庁所在地にも足を踏み入れています。このランキングでは昨年に続き北海道、京都、沖縄の順でベスト3となっています。私は北海道に住んだことがあり、沖縄には短期間滞在しました。京都は旅行その他で何度も訪れ、3道府県の魅力は知っているつもりです。特に北海道と沖縄は別格といえるほど大好きな地域です。

 北海道の春から秋にかけては、確かに魅力があります。自然が素晴らしいのです。しかし、長い冬はどうでしょうか。スキーなどのウインタースポーツをやる人はいいのですが、それをやらない人には我慢・忍耐の季節になってしまうのです。魅力度を探るアンケートには、到底こうした厳しい自然環境の中での暮らしや地域が抱える問題ついて考慮に入れてはいないのではないでしょうか。沖縄も京都も含め、この3地域は「観光面」ではとても魅力があります。その一方で北海道の冬は、白銀の世界とはいえ、その寒さに慣れるまで時間がかかります。夏の京都は暑くて暮らしにくいし、沖縄には深刻な米軍基地問題があります。

 では、改めて地図を開いて44位になった群馬県を見てみましょう。この地図は学研発行の『読んでみて楽しむ日本地図帳』で、その地域の特徴やよく知られた観光地なども紹介されています。群馬県の産業の特徴として「高原野菜の栽培が盛ん。周囲に産地が多く、夏の涼しい気候を利用して、キャベツやレタスなどの高原野菜を栽培、南部には平地が広がり、こんにゃくいもなどが生産される。かつては繊維工業が盛んだったが、近年は電気機器、自動車などの製造業が発展」とあります。このほか、2014年にユネスコ世界文化遺産に登録された「旧富岡製糸場」と2009年に日光国立公園から分離して29番目の国立公園になった「尾瀬」が紹介されています。

 群馬県は昼と夜の寒暖差が大きいのを利用して高原野菜の栽培が盛んであることは地図の説明にある通りです。以前、嬬恋(つまこい)村で高原キャベツを食べたことがあります。それまで食べていたキャベツとは別物で、甘くてやわらかみのあるいい味をしていました。

 群馬県の県庁所在地は前橋市で、詩人萩原朔太郎の出身地です。朔太郎の『純情小曲集』(1925年)の中の「郷土望景詩」に収められている「広瀬川」という詩は、渋川市前橋市~伊勢崎市を流れる利根川水系一級河川をテーマにしたものです。前橋市広瀬川沿いの遊歩道にはこの詩碑があります。ここにはこの詩碑だけでなく山村暮鳥、伊藤信吉、東宮七男、北原白秋などの詩碑、歌碑が多数並んでいて、散策するだけでも豊かな気分になるのではないでしょうか。

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 (以下、朔太郎の詩「広瀬川」)

  広瀬川白く流れたり

  時さればみな幻想は消えゆかん。

  われの生涯を釣らんとして

  過去の日川辺に糸をたれしが

  ああかの幸福は遠きにすぎさり

  ちひさき魚は眼にもとまらず。

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 群馬には山男を引き寄せる魔の山谷川岳(標高1963メートル)、志賀直哉の短編『焚火』で知られる赤城山(同1828メートル)など山を愛する人になじみの深い百名山に入る山々がそびえています。私は遠い学生時代、赤城山の麓のスケート場で友人のコーチで初めてスケートをしたことをかすかに覚えています。

 群馬は草津温泉水上温泉四万温泉と、名湯がある温泉県としても知られています。また、県のほぼ中央部に位置する渋川市は、へその町とPRしていることをご存じでしょうか。日本の主要四島で最北端の北海道宗谷岬と最南端の鹿児島県佐多岬を円で結んだ中心に渋川市が位置しているため、「日本のまんなか」といわれるのがへその町の由来だそうです。

 群馬にゆかりがある思想家の内村鑑三(江戸生まれだが、家は高崎藩士)は、上州人(群馬県人)のことを「正直で剛毅朴訥の至誠の人」と評しています。武光誠は『県民性の日本地図』(文春新書)の中で「生涯厳しい信仰態度を貫き、反骨精神をもって世の不正と戦った内村鑑三の生き方は群馬県民の気質の一つのあらわれといえる」と指摘し、「群馬県民は、がいして働き者で、目標を見つけるやそれにむかって一途につきすすむ生き方をとる」と書いています。同志社大学の前身、同志社英学校を設立した新島襄、『蒲団『田舎教師』で知られる作家の田山花袋も群馬の出身ですね。

 以上のように、私なりに群馬の魅力について書いてみました。これを見て、誰しもが「ランキング恐れるに足らず」と思うのではないでしょうか。茨城も同様です。

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 写真 1、今朝散歩コースの調整池の上に出た彩雲

    2、昨日の日の出の頃の調整池