小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

983 散歩コースに咲くユリ科の花 絶滅危惧種のユウスゲか

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毎朝、犬とともに散歩をする。そのコースには大雨の場合などに川の流量をコントロールするすり鉢状の調整池がある。その周りが遊歩道になっていて自転車もほとんど通らないため、散歩を楽しむ人が少なくない。遊歩道脇は斜面の部分が多く、その一角に最近、写真のような花が咲いているのを見つけた。家人は「ニッコウキスゲではないか」というが、それよりも花の色が薄い。では、何の花なのだろう。 ニッコウキスゲは日光の霧降高原や尾瀬などに群生していることで知られる。和名は「禅庭花」(ゼンテイカ)というそうだ。この花に近い種類を調べると、「ユウスゲ」(夕菅とも書く)という花があり、写真の花にそっくりだった。図鑑には「本州から九州の丘陵地の草原に生育する」との説明があり、特に伊豆地方や棚田の町である兵庫県香美町、熊本・阿蘇高原などで群生しているのを見ることができるという。
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しかし、都市化現象で全国的にこの花が姿を消し、多くの県で絶滅種、絶滅危惧種、準絶滅危惧種に指定している。私の住む千葉県では野生絶滅(EX)に指定しているので、写真の花がユウスゲであるなら、この花が千葉県に復活したといっていい。 この調整池周辺は、例年2、3回雑草を刈り取る作業が行われる。しかし、市役所の財政がひっ迫しているためか、年々作業の回数が減り、ことしは1回もないまま、雑草が生い茂っている。それがこの花の生育に効果があったのだろう。例年なら、茎が伸び始めたところで、雑草とともに刈り取られていて、散歩をする人の目に触れることはなかったのだ。 環境省絶滅危惧種(2種)に指定しているキンランも、調整池近くの雑木林に生えていたが、ことしは開花するのを見かけなかった。雑木林に隣接して10本ほどの松の木があるが、そのうち1本が枯れてしまい、伐採作業のため作業員が入り込んだ。これが影響したのかどうかは分からない。いずれにしても、散歩をしながら調整池周辺の植物を見ていると、自然界は強さと弱さが混在していることを実感させられる。 生まれ育った家近くには夏になるとヤマユリオニユリが咲き誇っていた。調整池周辺に咲くユウスゲと思える花を見ていると、懐かしい子どものころを思い出すのだ。
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