小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

624 チューリップのあいさつ 花の命は短くて?

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ことしの春は、寒暖の差が激しい。その影響が植物の世界にも顕著に出ているようだ。一度開花した草花類も、いつもの年より花が長持ちしている。この写真の花は何だろうと思われるかもしれない。2枚目を見れば、一目瞭然だが、1枚目だけでは「おや!」と思っても不思議ではない。長持ちした結果、このような現象になったのだろうか。 チューリップは、ここまで花弁が開く前に散ってしまうのが普通だ。作家の林芙美子は「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」という言葉を残しているが、ことしチューリップたちは、寒暖の差の大きい気候の中で花の命が長いようだ。
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先日、中央本線の穴山、小淵沢すずらんの里の各駅まで行ってきた。山梨県と長野県にまたがる地域である。小淵沢以外は無人駅だった。あいにく、雨が降り、コートなしでは寒くてたまらない。タクシーの運転手さんによれば、つい先日(17日)は、雪が20センチも積ったという。わが家の庭にもうっすらと雪化粧をしたのだから、標高の高いこの地域では当然なのだろう。 すずらんの里のある長野県富士見町は、諏訪地域に属する。この地域では諏訪大社の寅と申の年(7年に1度)という「御柱祭」が開催中である。テレビで見て、その豪快さに驚いた。何よりも、元気のないいまの日本にとって、このような活気こそが必要なのだと思った。この周辺では桜が満開であり、駅の斜面には群生したスイセンがひっそりと咲いている。このスイセンも、例年以上に長い花期を誇っているに違いないと思いながら、カメラのシャッターを切った。
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すずらんの里から小淵沢の駅に戻る。構内には立ち食いソバの店があり、ここでは薬味として「練り唐辛子」というこの地域の特産品が置いてあった。ソバを食べる人のほとんどがこの薬味を入れて食べている。ラー油と豆板醤の中間のような感じで、原料はゴマ油、菜種油に鷹の爪などをまぜたもので、薬味としては絶品だ。これから全国に普及するかもしれない。 今回の旅の行き帰りに直木賞を受賞した北村薫の「鷺と雪」を読んだ。久しぶりに小説を読む楽しさを味わった。言葉を大事にしているし、文章が美しい。「珠玉」という表現が似合う作品だ。昭和上旬の帝都・東京を舞台に令嬢と女性運転手が謎に挑む3つのシリーズだが、このシリーズについては近いうちに書くことにする。