小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1733 カタカナ交じりの山手線新駅名 難しい言葉の選択

画像

 JR山手線田町~品川間にできる新しい駅名が「高輪ゲートウェイ」と決まった。公募した新駅名では130位(36票)だったというニュースを見て、国鉄が民営化された当時、愛称として選ばれた「E電」のことを思い出してしまった。駅名だからすたれることはないだろうが、私自身は好きな名前ではない。

「E電」は、1987年に国鉄が民営化しJRが誕生した際、それまでの「国電」に代わる愛称が公募された際に選ばれた。といっても、今回と同様、上位を占めていたわけではなく、20位(5万9642通中390通)だったという。上位の「民電」「首都電」「東鉄」を押しのけて、選考委員会はこの名前を選んだ。しかし、利用者は意外にも民営化された象徴である「JR」を使い、「E電」は定着しなかった。「E」は野球のエラーをいうように、イメージが悪い上に「イーデン」という発音にも、違和感を持った人が多かったようだ。  

 今度の新駅名の公募では「高輪」「芝浦」「芝浜」が上位を占めたそうだ。だが、最終的に選ばれたのは、漢字とカタカナの混じった名前だった。選考の理由は「新しい街は江戸時代から多くの人が行き交い、にぎわっていた場所で新駅名は今後ビジネスの拠点としての発展に寄与する」ということらしい。

ゲートウェイ」を辞書で引くと、「異種のコンピューターやネットワークの間に立って整合性をとる中継システム。LANとWANをつなぐシステムを指すことが多い」(百科事典マイペディア)、「プロトコルの異なるシステムやネットワークを接続し、データを相互に交換できるようにする装置またはソフトウェア。プロトコル変換器の一種」(広辞苑)とある。理解するのはなかなか難しいが、コンピューター用語であり、中継的役割を果たすシステムといえようか。  

 新しい市や町の名前にカタカナ(ニセコ町=北海道、南アルプス市山梨県コザ市沖縄県)が採用される時代だから、若い世代には新しい駅名も違和感はないのかもしれない。だが、E電の時もそうだったが、せっかく公募しながら、かなり低いランクの名前を決めるという感覚が分からない。また、よく使われる言葉ほど短くという原則があり、長い名前の駅名は利用者から親しまれず、「高輪」あるいは「高ゲ」なんて短縮して言われるかもしれない。

 ことしの流行語大賞に選ばれた「そだねー」(意味はそうだね、そうですね)はまさしく、短くて分かりやすい言葉である。ちなみに筒井功著『東京の地名』(河出書房新社)の中に、「山手線の駅名由来記」があり、各駅がどのようにして命名されたかが説明されている。面白い話が多いが、もし新駅が追加されるとしたら、つまらない内容になると想像する。  

1662 笑いに飢えた時には 寿限無を思い出す長い駅名