小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

542 不屈の精神でMVPの松井 イチローとの比較

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 日本のプロ野球から大リーグに行き活躍しているイチロー松井秀喜は、どちらが大リーグの歴史に残る選手なのだろうか。 ワールドシリーズヤンキースが優勝し、松井はMVPに選ばれた。もちろん、日本選手初の快挙である。録画したヤンキースの優勝試合を見ていて、つい松井とイチローの違いについて考えてしまった。

 優勝を決めた試合で、松井は本塁打、安打、2塁打を打ちヤンキースの7得点のうち6打点をたたき出した。試合中の顔は、これまであまり見たことがないほど緊張感にあふれていた。ホームランを打っても笑顔は見せなかった。 彼本来の柔和な顔に戻ったのは優勝が決まりかけた9回表、相手チーム・フィリーズの攻撃が2アウトになってからだ。巨人の不動の4番打者に君臨したあと、大リーグに移籍して7年。順風満帆の野球人生を送っていた松井にもけがという敵が襲いかかった。

 その結果、今シーズンは守備につくことができず、指名打者に甘んじたのだった。しかし、不屈の精神で立ち直った。 天才という名をほしいままにしているイチローでさえ、ことしは体の変調で休む時期があった。頑健な体でも次第に衰えが忍び寄る。イチローも松井もそうした年齢に入ったのだと思う。 テレビのインタビューで松井は「勝ちたい。いいプレーがしたいと思っていたが、夢みたいです。どういうわけか、このワールドシリーズはいいプレーができました」と、話していた。その表情はとてもさわやかに見えた。

 さて、松井とイチローの比較である。2人とも「天才」という点では、衆目の一致するところだろう。さらに「努力家」という面でも共通する。2人の違いは、松井が「不器用」なのに対し、イチローは「器用」ということだと思う。 だからイチローは比較的不調の期間が短く、安定したバッティングができるが、松井はそれができずに苦しむ。それが打率に大きく反映する。

 解説者の張本さんは、松井を「フォームが固まっていない」といって、厳しい評価をしている。(日曜日の番組では、珍しく激賞していた。いいフォームをしていたと)でも、松井の不器用さを野球の神様はしっかりと見つめ、初めてのワールドシリーズという最高の働きをする舞台を与え、松井はそれに応えたのである。 松井の活躍はイチローにとって大きな刺激だが、ワールドシリーズでMVPになるのは天才イチローでも至難の技だ。松井はその意味でも、イチローと肩を並べたといえるのではないか.。(写真は共同)