小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1470 熊本地震と私たちの国の現実 地図を見て考える

画像

 熊本が大地震に見舞われ、苦境にある。被災者の方々にお見舞いを申し上げたい。いま私は日本地図を取り出し、後の方に出ている「熊本県全図」を見ている。県の全体図に細かい地名が載っている。旅をする前なら地図を見ることは楽しい。だが、被災地を地図でたどる作業はつらい。それは5年前の東日本大震災の時にも経験したことだった。

 熊本は、九州の中では中央部に位置している。海側は島原湾に面し、内陸には日本百名山の一つで活火山の阿蘇山(1592メートル)がある。以前、熊本を旅した際、熊本空港からバスに乗り、阿蘇の麓を抜けて黒川温泉まで行ったことがある。バスの車窓から「草千里」が見えた。「草千里」というのは、広辞苑によれば、阿蘇山の中央火口丘の一つ烏帽子(えぼし)岳北斜面の火口跡のことをいうのだ。現在は草原であり牧場になっている。窓外にはのどかな風景が広がっていた。

 いま熊本から阿蘇へと通じる街々は、大地震によって多くの家屋が倒壊し山が崩れ、悲惨な光景が続いている。それは津波に襲われた東日本大震災とは異なる直下型地震に見舞われた地域の姿なのだ。 これまで、私は熊本に震源地となった危険な活断層(布田川・日奈久断層帯があることは全く知らなかった。勉強不足なのかもしれない。

 阪神大震災東日本大震災に関連して熊本の危険性を伝えるメディアの記事は読んだことがないし、地震学者のアピールも聞いたことがない。毎日新聞特別編集委員で、初任地が熊本だったという著名なジャーナリストの岸井成格氏もこのことを知らなかったとテレビで話していた(TBS・関口宏サンデーモーニング)。

 一方、テレビ各局を見ていると、出演した地震学者は熊本を中心とする活断層が存在するのは学会の常識だと説明していた。だが、それがいかに危険な存在か、行政や県民に浸透していたのだろうか。東日本大震災の被災地の復興の動きを丁寧に追い続けている仙台の友人は、今回の地震について「私たち 震災の経験は伝わったのか?」というブログを書いている。考えさせられる 内容だ。

 地震といえば、長い間いわれているのが「東海大地震」である。いつきてもおかしくないといわれ、さまざまな対策が取られている。幸い、これまでにその兆候はないようだ。しかし、それに代わるように4つの大地震が起きて多くの人命を奪い、人々を不幸に陥れた。 今回の熊本地震も九州経済に大きな打撃を与え、日本全体に及ぼす影響は少なくない。

 今後、家を失った人たちは仮設住宅暮らしを余儀なくされるだろう。北と南で仮設住宅に暮らす人たちが存在するという現実。これが21世紀の日本の姿であることを直視しなければならない。

友人のブログ 震災日誌in仙台

関連ブログ

1469 つり橋と日本列島 明日への希望を

1465 未曾有の災害乗り超えて 『霊性の震災学』を読む