小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1464 ISとトランプ現象は格差社会への警鐘 4月1日に考える

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 4月1日はエイプリルフール(4月ばか)。嘘をついてもいいという風習の日だ。だが、現実の世界を見ていると、そんな心境にはなれない。21世紀はテロの世紀になってしまうのかと思わせるほど、ISによる無残で残酷なテロが相次いでいるからだ。そして、米国では次期大統領選の共和党候補者選びでトランプ氏という不可思議な人物がトップを走っている。

 ISとトランプ氏に共通するのは「極端」という言葉ではないかと思う。それは格差社会になってしまった現代に対する警鐘ではないだろうか。 米ソの冷戦時代を経て世界は穏やかな方向に進むのではないかと思われた。しかし、そうはならなかった。いつしか日本を含めて多くの国では格差社会が顕著になり、富める人と貧しい人との生活実態は広がる一途をたどっている。

 だから、若者や苦しい生活を強いられる人たちはISの誘いに乗り、トランプ氏の極端を突いた演説に惹かれる。現状を打破してくれるのではないかという願望が背景にあるのだろう。 いつの時代でも、格差はある。日本では江戸時代までの士農工商という身分制度があり、その階級から抜け出すのは困難だった。かつてはアメリカをはじめ黒人を奴隷とする国も存在した。

 アメリカの場合、南北戦争によって奴隷制度は廃止になったが、現代では極端な格差社会になっている。そして、トランプ氏のような大金持ちの言いたい放題、やりたい放題を看過しているのが世界の現状といっていい。 ソ連を盟主とする共産主義国も理想とは程遠い進路をたどり、スターリンのような独裁者が多くの人々を奈落へと落としてしまった。

 共産党独裁の中国は経済が発展している一方で、極端な格差社会謳歌する富裕層の爆買いが世界の話題になり、トップの世襲が続く北朝鮮は国際社会に挑戦する鬼っ子ぶりが目立つ。 第一次大戦後、ドイツでは国民の不満をうまく利用し実権を握ったヒトラーユダヤ人の殲滅作戦を実行に移した。

 同じように、ISもトランプ氏も、格差社会で苦しむ人々を巧妙に取り込もうとしているように思えてならない。アジテータといわれる人がいる。大衆を扇動する人のことだが、トランプ氏はその資質を持っているのだろう。ISはインターネットを扇動の手段にしているといわれる。

 世界の人々は、こうした扇動に対し一歩下がって冷静に考えることが必要だ。 日本の現状を見てみると、政治の世界では許容力、包容力がない時代になっている。野党の質問に対し「対案を出せ、○○党の時代よりもわが党の方がこれだけいいことをやっている」と、謙虚に批判を受け入れるだけの度量がない人が首相をやっている。

 東日本大震災から5年が過ぎている。だが、福島原発から避難を続けている人たちはいまなお約10万人も存在する。原発の制御もままならないにもかかわらず原発の再稼働が相次いでいる。理性、常識よりも何かを優先させているとしか思えない。それが政治の現状なのだ。

 それをチェックすべき報道機関は元気がない。批判精神を失ったなら、報道機関の存在意義はないのだが、覇気が感じられないのはどうしたことなのだろう。 危うい時代である。年度の始まりにあたる4月1日、ISの動きやトランプ現象は決して遠い国の出来事ではないとあらためて考えている。

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写真 (花を愛でる気持ちを大切にしたい) 1、ほころび始めた海棠 2、同 日本シャクナゲ