昨今の国際情勢は、きな臭さが増している。中東でのイスラム過激派集団「イスラム国」の動きに呼応したカナダ国会での銃乱射事件は衝撃だった。ロシアとウクライナの情勢も解決の見通しはつかない。
21世紀の地球は戦争の世紀といわれた20世紀とあまり変わらないほど不穏な空気に支配されている。そんな中、少しだけ心が温まる話を聞いた。それは、ラオスの山岳地帯で「子どもたちに教育の機会を」と活動を続ける女性をめぐる話である。
私は2009年9月、アジアの山岳少数民族地域で学校を建設しているアジア教育友好協会(AEFA)の関係者に同行して、ラオスの山岳地帯に行った。日本の学校の教師も一緒だった。その際、世話をしてくれた現地NGOの責任者にノンさんという女性がいた。
ノンさんについては、これまでこのブログで何回か取り上げ、肝臓病(肝硬変)にかかったことにも触れている。(以下を参照 「遥かなりラオス」 頑張れノンちゃん) ノンさんは今月半ば、同じNGOのメンバーであるニャイさんとともに来日、日本の学校を訪問して、子どもたちにラオスの実情などについての出前授業をした。
その合間に日本の病院で検査を受けた。その結果、肝硬変の進行は止まっており、これまでのように有効な薬を毎日一錠飲み続ければ、社会生活が維持できると医師から告げられた。 ノンさんの症状に有効な薬はアメリカ製で、一錠1300円と高価である。
以前、この薬について医師から紹介されたAEFAの関係者が、同等の効果があるジェネリック医薬品(新薬と同じ有効成分で作られ、薬事法に基づく厳しい基準や規制をクリアした薬。開発にかかる期間が新薬と比べて短い分費用が安く済み、価格も安くなる)を探したが、日本にはなく、インドのメーカーが製造していることが分かった。
当時、そのメーカーは東京に支社があり、インド人の支社長に面会すると、日本には輸入許可が得られていないので、売ることはできない、ただ、個人的にノンさんにプレゼントすることはできると申し出てくれた。約束通り、プレゼントが届き、1年半が過ぎた。 その後、支社長は別の企業の責任者として東京に残っており、今回お礼に訪ねたノンさんに対し、あらためて薬をプレゼントし続けると話し、自分に何かがあったら家族から薬を届け続けると、約束してくれたという。
医師であるノンさんは自分の病状について、かなり深刻に受け止めた時期もあったという。だが、AEFA関係者やインドのビジネスマンらの励ましで、気力を取り戻しているようだ。それは表情にも表れており、これからも山岳地帯の子どもたちのために、動き回るはずである。
ことしのノーベル平和賞にパキスタンの少女、マララ・ユスフザイさん(17)=イギリス在住=らが選ばれた。マララさんの勇気が平和賞に値するのは当然だが、ノンさんの活動は地味だとはいえ、マララさんにひけをとらないと私は思う。それをインドのビジネスマンは分かってくれたのではないだろうか。
以下、ノンちゃんと関係の深いラオスについてのブログ