小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1256 はびこる「緑の怪獣」 繁殖力旺盛なクズがイタズラ・注意看板を覆う

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 朝の散歩の途中、調整池の周りで写真のような看板を見た。看板には「かいだんちゅうい あぶない!」の文字と、青い体をした伝説の生き物・カッパらしいものが池にはまっている。その看板をツル性の植物がぐるぐると巻きつき、怪しい雰囲気を醸し出している。それは「緑の怪獣」の異名を持つクズ(葛)の仕業だった。

 繁殖力の強いクズがこの周辺でも確実に生息範囲を広げている。 『週末のナチュラリスト』(パキラハウス編・講談社)には、身近な自然界のことが様々な角度から紹介されている。「クズ」もその中に登場する。その要点は―。

≪愛されるツル性植物の筆頭がツタならば、嫌われる筆頭がクズで、繁殖力の旺盛なことは恐ろしいほど。荒れ地や土手などにはびこり、一本のツルが10メートルくらいは伸びる。円を菱形に引っ張ったような広い葉は、夜には閉じて眠るが、夏の暑い日に昼寝をするというからまるで動物だ。

 アメリカには100年前日本から渡り、生け垣やダムの土止め、家畜の飼料にも使われた。全米クズ協会ができたり、ミス・クズの女王コンテストが行われたりしてもてはやされた時期もある。しかし、その猛烈な繁殖力のため電線を切るなどの被害が出始め、「緑の怪獣」のあだ名もついた。最近は自然食ブームでクズの根から取ったクズ粉が見直され、名誉を回復しつつあるという≫

 漢方薬に「葛根湯」という風邪薬がある。この中にもクズの根は配合されている。クズには発汗作用があるのだそうだ。 クズは別名「裏見草」ともいわれ、歳時記には「葉の裏が白く、風に吹かれるとそれが目立つことから『裏見葛の葉』と称し、和歌では『恨み』にかけて詠まれた」(角川書店・俳句歳時記)とある。

 クズの俳句の季語は秋だが、クズの粉に砂糖を加えて熱湯で練り固めてから細く切って、蜜をつけて食べる「葛切」は、夏の季語であり「葛切の舌にはかなき午後三時」(文挟夫佐恵)という名句もある。

 それにしても、クズに巻かれた看板は、「息苦しい」印象を受ける。地方自治体の予算が苦しいせいか、なかなか雑草除去の作業が実施されない。それがこんな現象を招いてしまったようだ。クズは成長を続けているから、このままでは近いうちに看板全体を覆ってしまうかもしれない。その前に、鎌で伸びきったツタを切ろうかと思っている。

お知らせ」  アジアの山岳少数民族地帯で学校を建てているアジア教育友好協会(AEFA)というNPOのことはこのブログでも何度か紹介したことがある。AEFAはことしで創立10周年を迎え、その記念に「輝く瞳とともに アジアの途上国に学校をつくった人たちの物語」(かんき出版)という本を出版した。ラオスベトナム、タイの山岳地帯で191校を建設したNPOの地を這うような活動と、それを取り巻くボランティア、寄付者、現地の子どもたち、交流を続ける日本側の学校の姿、現地NGOの人々の取り組みなどが生き生きと描かれている。アマゾンでも購入できる。

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