小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1255 待宵草が咲いている hanaの死から1年

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朝、いつもの散歩コースである調整池の周囲を歩いていると、黄色い花がひっそりと咲いているのを見かけた。帰宅して図鑑で調べると「マツヨイグサ」(待宵草)と分かった。この花はたしか昨年の夏も見た。しかし、わが家で飼っていた犬のゴールデンレトリーバー(メス11歳)のhanaが重い病気にかかっていて、散歩をしていても花を楽しむ余裕はなかったから、写真も撮っていない。 hanaはちょうど1年前のきょう、7月30日に死んだ。あれから365日が過ぎている。hanaを失った悲しみは次第に薄れているが、折々にhanaと暮らした日々が浮かんでくるのである。 久保田修著「散歩で出会う花」(新潮文庫)の「マツヨイグサ」には、こう書いてある。「アカバナ科南アメリカ原産。荒れ地や草原などで見られる。花は夕方から咲き、朝にはしぼむ。花の直径は5センチまでで茎上部に咲くが、北アメリカ原産のメマツヨイグサのような、穂状花序にはならない。花の直径が8センチに達するのはほぼヨーロッパ原産のオオマツヨイグサ(別名月見草)。北アメリカ原産のコマツヨイグサは花も小さく、茎は地面をはうことが多く、葉は羽状に裂ける」とある。 竹下夢二作詞、多(おおの)忠亮作曲の「宵待草」という名曲がある。 「待てど 暮らせど 来ぬひとを 宵待草の やるせなさ 今宵は月も 出ぬそうな」 こんな詩である。 文芸評論家の杉本秀太郎によれば『「宵待草」は「待宵草」を転倒させて、勝手に夢二が作り出した名』(花ごよみ・講談社学術文庫)だそうだ。月見草と待宵草は同じアカバナ科に属するが、別の花だそうだ。うっかり者は、宵待草という植物があるのかと勘違いしてしまう。 杉本の本には、本来の月見草は北米原産で今ではめったに見られないのに対し、オオマツヨイグサは北米原産のものをもとにヨーロッパで作り出した園芸植物で、明治初年ごろ日本に入り、その後広く野生化し、日本全土に広まったとも書いてある。 月見草夢二生家と知られけり 文挟夫佐恵 月見草ひらかんと身をよぢらせて 青柳志解樹 月見草ランプのごとし夜明け前 川端茅舎 川端の句を解説した山本健吉は「待宵草、一名月見草というのが、今日の常識」(句歌歳時記 夏、新潮社)と書き、待宵草を月見草と呼んでもいいという考えを示している。いずれにしろ、どちらの名前も風情があって夏らしい雰囲気がある。 写真 1、ひっそりと咲く待宵草の花 2、萩も咲き始めた
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