小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1194 かぐや姫の物語 モルッカ(インドネシア)にもあった竹取物語

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 アニメ映画「かぐや姫の物語」(高畑勲監督)は、日本最古の物語といわれる「竹取物語」を映像化したもので、美しい色彩が心に残る作品だ。 竹取物語は、作者も書かれた年代も不明だが、遅くとも平安時代初期の10世紀半ばまでには完成したといわれる。

 インドネシアモルッカ諸島にもモルッカ竹取物語があることを「星の文化史事典」(出雲晶子著)で知った。日本の話は悲しいが、モルッカの方は王家誕生物語だ。

モルッカ諸島のビガラという王様がバチャン付近で竹が血を流しているのを発見した。切ってみると、4匹の蛇が入っていた。

 すると、この4匹の蛇は将来、王族になるという声が聞こえた。この4匹の蛇(竜)の卵から、それぞれバチャン島の王族、ブトン島の王族、パプア諸王の祖先、ロロダ王妃となる女王が生まれたという。 年月がたち、ブムゴンゴンという村の村長アマリエと妻イナリエは子供がなかった。

 2人はあるとき川で卵を拾った。その卵からモコドルドゥトという男の子が生まれ、地域の支配者として認められた。竜の卵=王族とみなす伝承がある。この子はまもなく病気になったが、ドゥドゥク鳥が飛んできて子供を温め、夫婦は夢のお告げで7本の竹にサゴヤシのサゴを入れ、食べさせると子供はよくなっていった。

 治療が始まって14日目、7本の竹のうち1本が大きな音をたてて割れ、中から美しい娘が出てきた。夫婦は娘をバウニアと名付けて育て、モコドルドゥトを結婚させた。これがボーラン王家の始まりである。

 異聞によると、モコドルドゥトの祖父は天から降りてきた人物で、モコドルドゥトは祖父の娘と、天の神の一人との間に生まれた卵から誕生したとされる。彼の妻は同じく竹から誕生した。(インドネシアの神話)》

 モルッカ諸島は日本では知る人は少ないが、「香辛料諸島」としてヨーロッパや中国では有名らしい。昔からナツメグクローブなどの香辛料など価値の高い農産物を生産しているからだ。

 この島をめぐって16-17世紀にはヨーロッパ諸国(主にイギリスとオランダ)が戦った「香辛料戦争」も発生し、6000人もの島民が犠牲になったという。この戦争を描いた「スパイス戦争」(ジャイルズ・ミルトン著 松浦伶訳・朝日新聞社)という歴史小説もある。戦争がおきるほどだから、嗜好品ともいえるスパイスが人間に及ぼす影響ははかり知れない。

 映画の話に戻る。高畑監督のアニメは話題になった宮崎駿監督の「風立ちぬ」とは、趣が違う。私はどちらかがよかったかと聞かれたら、高畑作品と答える。 ところで「星の文化史事典」の最後の項目は「ん」の「ンマノフシ」(沖縄県那覇市糸満の漁師の言葉らしい)だ。これは「さそり座のアンタレスとする説があるが、季節ごとに南に見える明るい星は異なるので詳細は不明である」と書いてある。さて、ンマノフシというのはどの星なのだろう。

 写真 幻想的な雪の朝