小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1126 都市部のマンションにヤモリ 益虫・害虫の話

画像 子どものころの夏の楽しみというか、遊びは近くの山に行ってクワガタを取ってきて、雄同士で戦わせることだった。クワガタの雄には、角のように見える大きな顎があり、それが武器になるのだ。

 クワガタに比べてカブトムシはどこにでもいて価値が低かった。慣れというのはおかしなもので、庭先で昆虫を見てもあまり驚かない。だが、大都会のマンションにヤモリが出没することを聞いて、ヤモリの奴、なかなかやるものだと感心した。

 東横線沿線に住む友人は、マンションに暮らしているが、ある夜、部屋の壁に写真のような小動物がいるのを見つけた。友人は「イモリかヤモリかよく分からない」というが、辞書を調べると、イモリはカエルと同じ両生類で水中に住み、ヤモリは蛇と同じ爬虫類で陸上生活をしている―という違いがあり、腹の色もイモリは鮮やかな赤、ヤモリは黄色という特徴があるそうだ。

 それからすると、友人が見つけたのはヤモリのようだ。友人はこのヤモリを捕まえ、小さな箱に入れて置いたが、朝になってみてみると、隙間がないはずなのに、姿が消えていたという。 私の家でも室内で時々大きなクモを見かける。

 捕まえようとすると、逃げ足が速くどこかに隠れてしまう。ゴキブリなど家の中にいる害虫を食べてくれる益虫の「イエグモ」だ。ヤモリも、蚊や蛾などを食べてくれる益をもたらすは虫類 で家を守るというのが名前の由来だという。

 このクモが私の家で見かけるようになってかなりの年月が経過した。家族は気持ちが悪いというのだが、益虫であることを考えれば、そう目くじらを立てることではない。

 ところで、家の中から一歩外に出ると、やぶ蚊が襲ってくる。昨年までは蚊に食われてもかゆみも少なく、虫刺され用の薬を付ければ跡もほとんど残らなかった。ところが、この夏はそれが少し違う。かゆみがひどく、けっこう刺された跡も残っている。体質が少し変わったのかもしれない。

 知人によれば、庭のやぶ蚊の発生源である水たまりに10円硬貨を入れて置くとボウフラが死滅し、やぶ蚊の大量発生防止になるそうだ。しかし、隣接する家が何もしなければ、その効果はない。やぶ蚊も自然界の一員として半年近く、その勢力を誇示しているのかもしれない。

 文化人類学者の今西錦司は「私の自然観」という本の中で「人の世のあわただしい変転とは反対に少しも変わらぬのが自然だ」と書いている。たしかに、自然の変化に比べると人類の有為転変は激しい。

 この日本社会を見れば、政治家たちがやぶ蚊のように飛び回る選挙(参院選)が真っ最中だ。21日の投票で、当選した人たちがどれほど私たちの益虫的存在になってくれるのだろうか。あまり期待できそうにもないと思うのは私だけだろうか。