小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1036 出会った人たちの言葉(5) 自分にできるだけのことを自分なりに

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(2010年分、肩書きは当時のまま)

  ▼子どもの成長を支える地域の大人

 子どもたちは、学校の外で知識や技術を学ぶことも多い。自分たちで工夫し、様々な体験を通じて育っていく。それを支えるのは、地域の大人たちだ。

(2010・1 学校とは別に遊びを通じて子どもたちの学びの場を提供している静岡市のまなびや・弓削幸恵さん)

  ▼中米の子どもの学ぶ姿勢を伝えたい 中米の子どもたちが何をどう学んでいるのかをこの目で見て、帰国後は出前授業などで日本の子どもたちに、海外の子どもたちの学ぶ姿勢を伝えたい。(2010・1 パナマの教育改革に協力する遠藤正芳さん)

 ▼森づくりの夢を語り合う

 毎月1回、料理を持ち寄り、酒を酌み交わしながら森づくりについての夢を語り合っている。生い茂った葛と竹を切り、かつての建昌城跡の森がよみがえり、町民の憩いの場になることが楽しみだ。(2010・1 鹿児島県姶良町森林ボランティア・四季の会の塩川英彬さん)

  ▼生と死を歩む人に寄り添い

 スピリチュアルケアは、生と死を歩む人の今に寄り添い、縁の下の力を最大に生かし、その人が自己の命・人生を統合しようとすることを助けることだ。(2010・1 千葉大のいのちを考える講座で岐阜県高山市の飛騨千光寺住職、大下大圓さん)

  ▼危機迫る南太平洋の島々

 地球上には10万以上の島があり、10人に1人は島に住んでいる計算になる。人間の生命維持装置として島は必要で、食糧安全保障、エネルギーの源だ。このうち南太平洋の島々は人口増、漁業資源の乱獲、自然災害で危機が迫っている。国際的視野からの支援が必要だ。(2010・2 島と海のフォーラムで、オーストラリア国立海洋資源安全保障センターのマーティン・チャーメニ教授)

  ▼漢字は美しく日本語が好き

 日本語の文字(漢字)は難しいが、美しい。日本語の勉強を通じて日本のことを沢山理解した。日本語が大好き。(2010・2 海外の日本学生を対象にした日本語作文コンテストで最優秀賞を受賞したニュージーランドオークランド大学のサマンサ・ビッケリーさん)

  ▼無理して頑張らなくともいい

 時々疲れることがある。多くの人から頑張れと言われる。でも、頑張りたくないときは、無理して頑張らなくともいいと思う。(2010・2 兵庫で暮らす中国籍の高校生・大西彩加さん。2008年に四川省から母親と一緒に来日)

  ▼伝統的情緒失った京都

 京都の建物は昔ながらの形を保っているが、それを見て古い感じはしなかった。それより先に目に入るのは人とお土産店だ。京都は伝統的情緒を失っているのではないかと心配だ。京都より奈良の方が好きという人の気持ちが分かった。(2010・2 作文コンクールで上位に入り、日本に招待された中国の女子学生)

  ▼船員になり外国に行きたい夢かなう

 中学生のころに、将来は外国に行きたいという夢を持った。それを実現するために船員になった。オーストラリアからフィンランドまで石炭を運んだ船長としての初航海は、いまでもよく覚えている。目標に向かって体を鍛え、勉強してください。(2010・2 元山下新日本汽船、船長の池上武男さん。岡山県倉敷市の小学校の出前授業で)

  ▼子犬との別れに涙の受刑者

 初めのうちは心を閉ざしていた受刑者も訓練終了の際には、ありがとうございましたと、刑務官に感謝していた。子犬を育てた受刑者たちは、子犬たちとの別れの時に涙を流していた。(2010・2 社会資本整備方式の刑務所・島根県の島根あさひ社会復帰促進センターで実施している盲導犬のパピー飼育の教育プログラムに協力している日本盲導犬協会島根あさひセンターの横田剛さん)

  ▼ストレス解消には愚痴を

 ストレス解消のために、職場で愚痴をこぼし合うネットワークをつくってください。ただし、人を傷付けないという愚痴を忘れずに。(2010・3 井上ウィマラ・高野山大学准教授。ホスピスナースの研修会で)

  ▼川の浄化運動がここまで

 わずか10人で始めた川をきれいにしようというささやかな市民運動の参加者が年間1000人を超えるなんて、考えられません。川や海を汚すのは人間だ。それをやめさせるにはどうしたらいいのかを子どもたちに分かりやすく教え続けたい。(2012・4 熊本県八代市の次世代のためにがんばろ会の松浦ゆかりさん。三男を交通事故で亡くし、ボランティア活動を始める)

  ▼日本の商船乗組員の95%は外国人

 海洋国日本を支えているのは世界トップクラスのシェアを維持する商船隊なのに、日本の商船乗組員の95%は外国人だ。日本人船員を増やすために義務教育段階での海洋教育や商船の現場を魅力ある職場にするという環境整備が必要だ。(2010・4 海洋フォーラムで日本船主協会の林忠男さん)

  ▼団塊の世代として恩返し

 小中学校の先生たちが「おおごつだけん」(大変苦労されているという熊本弁)、少しお手伝いしとります。団塊の世代のトップバッターとして退職、世の中に恩返しをしたい。(2010・4 熊本のNPO教育支援プロジェクト・マスターズ熊本の石井憲子さん)

  ▼ハイチの避難民が心配

 ハイチ地震の避難民は1つのテント(2・5畳)に6、7人が入っていた。中には13人もいて身動きが取れないテントもあった。風呂はなく、穴を掘ってトイレ替わりにしていた。食べ物は1日1食分しかなく、避難民の健康が心配だ。(2010・4 大地震に見舞われた西インド諸島のハイチで救援活動をしたNPO災害看護支援機構の山崎達枝さんと黒田裕子さん)

  ▼日本の再生は農村の復活から

 かつて経営コンサルタントをやっていて、バブル崩壊後は大銀行の不良債権問題、産業の空洞化、資源の枯渇の三重苦が日本社会を覆うと考えたが、その通りになった。日本の再生には農村の復活が有効と信じ、山梨に移り住み、実行に移した。(2010・5 山梨県北杜市で農村再生の活動を続けるNPOえがおつなげての曽根原久司さん)

  ▼村が元気になる水先案内人に

 地域と森の再生活動を通じて、村が元気を取り戻し、それが人間の誇りにつながるような水先案内人になるのが私の目標だ。(2010・5 森林ボランティアの育成活動を続ける丹羽健司さん。活動は愛知から岐阜、鳥取へと広がっている)

  ▼被害者のことを思う日々

 現役時代は被害者から容疑者逮捕につながることばかりを聞いて、被害者の思いをきちんと聞いていなかった。以前の日記を読み返し、担当した被害者のことを考えている。(2010・6 元鳥取県警捜査一課長で、とっとり犯罪支援センター事務局長の田中完治さん)

  ▼個性があり楽しい作品を展示

 この地域は障害を持っている人の創作活動が盛んだ。専門家に任せきりにしないで、自分たちでネットワークづくりを始めた。個性があって、楽しい作品をできるだけ多くの人に見てほしい思い、美術館をオープンした。(2010・7 北海道上川郡当麻町の廃校になった小学校校舎を改修して障害者のアート作品を展示しているかたるべの森美術館の石黒康太郎さん)

  ▼NPOは学びの場、陶芸はそれを生かす場

 障害者とのかかわりの中で既存のアートの枠を超えた障害者たちの作品の魅力に気が付き、NPOをつくりその普及活動をやっているが、NPOは学びの場、本業の陶芸はそれを生かす場だと思っている。(2010・7 アウトサイダー・アートの作品普及活動と陶芸家の2足のわらじをはき続ける北海道旭川市の工藤和彦さん)

  ▼2048年には世界の漁業は壊滅か

 漁獲の推移を見ると、世界の漁獲量は過去30年間減少し続け、魚の小型化も進んでいる。このまま推移すると、2048年には壊滅状態になる。管理されていない海からは魚が消え、クラゲが増えるだろう。(2010・7 魚のいない海の著者で、フランスの地中海及び熱帯漁業センター・フィリップ・キュリー所長)

  ▼父親のバイオリンで音楽の普及を

 父が亡くなって東京から京丹後に移りすんだ。父の残したバイオリンの資料を使って丹後地方に音楽を普及したいと思ったからだ。やることがたくさんある。バイオリンの製作教室も夢の一つです。(2010・9 NPO音楽のまちづくりの代表、田中千穂さん。バイオリン製作者・田中博さんの一人娘、京都市京丹後で音楽の普及活動をしている)

  ▼赤レンガの魅力を掘り起こす

 赤れんがは、魅力がたくさんある。市民とアーチストとの交流を通じて、赤れんがに代表される舞鶴の魅力をさらに掘り起こしたい。(2010・8 京都府舞鶴市の赤れんが倉庫群で芸術イベントを開いているアート・ディレクターの森真理子さん)

  ▼限界集落の再生に必要なものは

 地方は元気がない。ほとんどが年金と少ない農業収入に頼っているところが多い。後継者は地区を出ていき、集落の再生はうまくいかない。少ない収入をカバーするには生活コスト(光熱費など)を下げる必要があり、廃校になった小学校校舎で木質バイオ発電を考えている。(2010・8 東京から新潟県南魚沼市にIターンし、限界集落の再生活動をしている坂本恭一さん)

  ▼健康とやる気がシニアボランティアの条件

 海外でのシニアボランティアの条件は、健康とやる気だ。これまでの人生で比重が大きいのは、終戦直後の混乱期に旧満州時代の新京(現在の中国東北部長春)で送った子ども時代、世界の海を航海した船乗り時代、そしてスリランカでのボランティア生活時代の3つですね。(2010・9 スリランカでシニアボランティアとして干物やカツオ節づくりを指導した横浜市の村上清一郎さん)

  ▼状況説明を入れるバリアフリーの映画

 バリアフリーの映画を見たいと思っている人たちが多い。セリフとセリフの間に状況説明を細かく入れるが、健常者が見ても邪魔にならないよう心がけており、みんなが一緒になって楽しんでもらえるのではないか。(2010・10 音声ガイドと字幕スーパーでセリフの合間に状況の説明を加えるバリアフリーアニメ作品を制作している松戸誠さん)

  ▼自衛手段に相乗り交通

 以前は道路が狭く、バス路線がなくとも富士山が見える高台の住宅街として人気があった。いまは高齢化が進んで移動手段がない高齢者は買い物のための外出もできない。ようやく協力してくれるハイヤー会社が見つかり、相乗りで駅やスーパーまで出かけることができるようになった。自衛手段です。(2010・10 横浜市港北区の会員登録制のあいのり交通サービスの中心メンバー横木茂樹さん)

  ▼擦り傷を作って遊ぼう

 子どもたちには、擦り傷くらいつくって帰りなさいと勧めている。会費や会則はなく、利用者のルールはけがと材料は自分持ちということだけで、好きに遊んでもらっている。森から私たちは元気をもらっている。(2010・10 山口県周南市の標高300メートルの森を再生し、大人や子どもの森との触れ合いを手伝っているふれあいの森なんでも工房の村田真博さん)

  ▼被害者も声を出そう

 4歳の娘を飲酒運転の車にひかれて亡くした。遺族会に入り子どもを亡くした悲しみ、苦しみをメンバーとともに分かち合い、犯罪被害者支援センターの相談員になった。昔と変わって、被害者も声を出しやすくなってきた。殺人犯が服役している刑務所でも受刑者に話をしている。(2010・10 被害者支援センター・ハートライン山口の山根和子さん)

  ▼危機ではない電子書籍時代

 電子書籍時代がやってきていることが危機とは思っていない。マーケットの拡大につながればいい。読者が必要と思うのなら、私たちも対応する。でも私は紙の方が好き。(21010・11 米英の著名編集者。電子書籍時代に関するシンポジウムで)

  ▼ハチドリのひとしずくの思いで

 南米・アンデスにハチドリのひとしずくという伝説がある。森が大火事になり、ハチドリはくちばしで水を運んで火にかける。火事は消えそうになく、ハチドリは見ていたほかの動物たちに笑われるが、ハチドリは私にできることをやっているだけと答えるという話だ。私も自分ができることを自分なりにやればいいと思っている。(2010・11 アフリカスーダンで医療活動をしている川原尚行さん)

  ▼稼いでいると思ってもらう仕組みづくり

 17年前、板金塗装や塗料の吹き付けに使う簡易フィルターを製造していた時代に、知的障害者が実習にやって来て、それがきっかけで9人の障害者を雇用した。それが障害者の就労を支援するNPOに発展した。無農薬野菜の栽培と出荷で「ワシは稼いどるぞ」と思わせるしっかりした仕組みづくりが目標だ。(2010・12 島根県米子市NPOしんらいの進清次さん) 

                            (続く)