小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1034 出会った人たちの言葉(4) 閉じこもるより街に出よう

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(2009年分、肩書きは当時のまま)

 ▼あなたに会えてよかった

 子どもたちは純真でうそがなく、ありのままの個性を見せてくれて実にかわいらしい。あなたに会えてよかった。生涯学習という言葉を聞くが、人間磨きの1年になりそう。

(2009・1 技能ボランティア海外派遣協会からモンゴル・ウランバートルダウン症児の支援に派遣された札幌市の藤井洋子さん)

  ▼問題多い親族の里親

 他人が他人の子どもを育てる日本の里親制度と違って、韓国では親族の家に預ける親族里親が中心だ。しかし費用削減のためにだけ利用される恐れが高く、しかもその親族がお年寄りの場合養育能力が劣るケースもあり、今の制度はまだ問題が多い。

(2009・1 韓国で困難を乗り越え里親制度を実現させた韓国フォスターケア協会の朴英淑(パク・ヨンスク)会長。日韓里親フォーラムで)

  ▼ケアとは人と人のつながり

 家庭の介護力は落ちてきている。その一方で完全個室制をとり、効率化に動く施設が増えている。これではケアにならない。ケアは、人と人とのつながりが大事なのです。

(2009・1 一戸建て住宅で認知症や末期がんの患者を介護する宮崎市NPOホームホスピス理事長の市原美穂さん)

  ▼待ちの姿勢ではできない就労

 沖縄は障害者が就労しようとしても、そのハードルは高い。待ちの姿勢ではだめ。自分たちで就労の場を作ることも必要ではないか。沖縄特産のウコンを粉末にして発売する作業を施設の中で始めたいと考えている。

(2009・2 沖縄県糸満市NPOワークサポートひかりの事務局長、松田修さん。パイ作りで知られる東京の社会福祉法人で研修を受けて)

  ▼夢が少ない若者

 日本では夢を持っている若者が少ない。奇想天外な発想も感じられない。一方で日本語を学ぶ中国の若者は意欲があり、夢も持っており、日本の若者には脅威だ。鶴岡のある山形庄内地方は文化レベルも高く、自然も美しい。第2の故郷になりました。

(2009・2 中国の学生を対象に日本に関するクイズ大会を開催している日本科学協会の会長で、鶴岡市東北公益文科大学で教鞭をとる大島美恵子さん。大島さんは江戸時代の医師、緒方洪庵の子孫)

  ▼社会全体で人権を考え直そう

 日本のハンセン病問題は解決したといっても、社会的差別の解消とかやるべきことは多い。精神障害や難病の人々は社会的、経済的に被害を受けている。社会全体が人権について考え直す必要がある。急激に進行している高齢化社会の日本を救うためには、国民の暮らしを質素にしても高福祉、高負担を実現すべきだ。

(2009・2 国立ハンセン病資料館名誉館長・元国際医療福祉大学総長の大谷藤郎さん。2010・12・7死去)

 ▼人間には自分で癒す力がある

 ホスピスで働くナースがストレスを抱えないためには、物事を肯定的に受け止めるよう訓練し、笑顔で仕事ができる環境をつくることが重要だ。ナイチンゲールは、人間は自分で自分を癒す力を持っているという言葉を残した。迷った時や疲れた時はこの言葉となぜ看護師になろうとしたかを思い出してください。

(2009・3 千葉大大学院看護研究科の手島恵教授。ホスピスナース研修会で)

  ▼閉じこもるより街に出るのが好き

 原稿を書くのは苦手です。でも家に閉じこもっているより、街に出て行くのが好きなので、やりがいがある。多くのみなさんに記事を喜んで読んでもらえることが励みになる。

(2009・3 阪神大震災で大きな被害を受けた神戸市長田区で、障害者向けの情報紙を発行しているNPOウィズアスの坂田暢子さん。車いすで取材活動をしている)

  ▼ウォーキングバスで安全で安心な街づくり

 ウォーキングバスは遊び感覚と参加者のコミュニケーションを大事にしている。地域の大人が立ち上がり、子どもたちの自立を育んでいる。安全で安心な街づくりが目標です。

(2009・5 登下校時、運転手役と車掌役の大人が子どもたちの前後になって、一緒に歩くウォーキングバスの運動をしている北海道苫小牧市NPOエクスプローラー代表・佐藤一美さん)

  ▼奥深い日本の文化を伝えたい

 日本の文化の奥深さを感じる。大分をはじめ日本が生んだ先哲を学ぶことは大切で、次代を担う子どもたちに日本の歴史や日本人の営みについて、きちんと伝えたい。

(2009・6 大分で子ども向けの寺子屋を運営する大分いずみの会代表の小山田千鶴子さん)

  ▼絵と音楽のつながりが見えた

 ある晩ひとつのフレーズが頭の中で鳴り続ける中、キャンパスに向かった。すると、その時、初めて描くことによってその音楽と自分の無意識的つながりが見えるのを知って驚いた。

(2009・6 バイオリニストの庄司紗矢香さん。東京・京橋の画廊で開催された絵の個展で)

  ▼食卓から消える?マグロとウナギ

 マグロとウナギは近い将来日本の食卓から消えるだろう。カツオ、サンマなど良好な資源の活用や偏った食習慣の改善が必要で、魚類資源の管理のための施策が緊急の課題だ。

(2009・6 木村伸吾東大教授。食卓に迫る危機シンポジウムで)

  ▼日本のいい面をカンボジア

 カンボジアを私の力でいい方向に変えていきたい。日本は悪いところもあるが、いいところがたくさんある。たとえば、マナーの良さ、仕事を頑張ることなど日本人のいい面をカンボジアに持ち帰り、われわれにもできるはずだと教えてやりたい。

(2009・7 千葉大大学院で地下水の研究に取り組んだカンボジア人・モニラ・ブティさん。2010・4に帰国)

  ▼車いすで動く自由を

 自分では外に出ることができない障害のある子どもは少なくない。車いすを使って動く自由を味わい、地球規模で物を考えるように成長してほしい。私は不幸ではないし、泣いていても何も解決しない。よりよく生きることを考えたい。

(2009・7 がん体験を乗り越え、海外の子どもたちに車いすを送り続けている東京・福生市NPO海外に子ども用車椅子を送る会の森田裕和会長)

  ▼人生の物語を伝えたい

 人生は自分の物語をつくること。その物語をきちんと伝えるのは大事なことだ。私たちの活動がそのきっかけづくりになればいい。

(2009・7 日本に伝わる民話の語り公演を続けるNPOちんじゅの森代表理事の中尾伊早子さん)

  ▼カルチャーショックを乗り越えて

 生まれた時から日本で育ち、日本の文化の中で育ったシニアには海外でボランティアとして生活するのは大変なこと。異文化の中でカルチャーショックを乗り越えて、新しい自分を発見してほしい。

(2009・8 技能ボランティア海外派遣協会フィリピン代表の二子石章さん)

  ▼落ちそうになる人を受け止める網

 私たちの活動は、(死に向かって)落ちそうになる人を受け止めるサーカスの網のようなものだ。生きていれば楽しいことがある。相談者には生きることに勇気と希望を持ってもらいたいと思う。

(2009・9 自殺を選ぼうとする中小企業経営者の相談に乗る秋田市NPO蜘蛛野糸理事長の佐藤久男さん)

  ▼衰退した漁村の活性化のために

 日本近海の海は病み、沿岸資源は枯渇し、多くの漁村は過疎化が進行している。衰退した漁村を活性化させるには沿岸漁業の再生が不可欠だ。

(2009・9 大型の海藻(こんぶ)を栽培し、藻場の改善を進める海の森づくり運動を進める秋田市NPO海の森推進協会代表理事の松田恵明さん)

  ▼若者のための地域づくり

 最上川がもたらしてくれるものは豊かで、生まれ故郷の長野よりも山形が気に入っている。しかし山形の学生が卒業して山形に残りたいと言っても、仕事が少ない。若者のためにも仕事づくり、地域づくりが重要だ。

(2009・11 山形県最上川流域の文化の継承を目的に活動するNPO里の自然文化共育研究所の出川信也さん)

  ▼美しく生きるための手助け

 だれでもが美しく生きたいと思っているが、外出ができない高齢者や障害者はその希望がかなわない。そんな人たちのために訪問理美容をやっている。最近は高齢で寝たきりの人の利用が目立ち、介護、医療の知識も求められている。

(2009・12 愛知県日進市NPO全国福祉理美容師養成協会理事長・赤木勝幸さん)                                                                                      

                                 (続く)