小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1033 出会った人たちの言葉(3) 悩みを抱えて生きるのはもったいない

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(2008年分)

  ▼若い層が発達障害児問題に目を向けて

 発達障害児を支えるボランティアの輪を広げたいが、学生たちの目は老人問題の方に向いている。発達障害児問題に対し、若い層がもう少し協力してほしい。

(2008・1 発達障害児を支援するボランティア団体・もぐらの上田志美子さん)

  ▼平和こそが多くの命を救う

 命は体の中のどこにあるか見せることはできない。しかし君たちは自分の意思で使える時間を持っている。これが命だ。長生きすれば人のために時間が使える。医者は命の大事さを知っているが、平和こそが多くの人の命を救うことになる。平和のために尽くしてほしい。

(2008・1 聖路加国際病院理事長の日野原重明さん。千葉大のいのちを考える講座で)

  ▼自殺者も同じ日常を生きている

 現状では(年間3万人を超える)自殺は絶対に減らない。自殺をする人も私たちと同じ日常を生きている。自殺は他人事ではない。

(2008・1 NPO自殺対策支援センターライフリンク清水康之代表。千葉市で開催された自死遺族支援全国キャラバン・フォーラムで)

  ▼犠牲になった子どもを思う

 戦争は悲しくて残酷だ。若者や小さな子どもまで犠牲になったことを思って、涙が流れそうだった。

(2008・1 日本の知識を競い合うクイズ大会で優勝し、日本に招待され、沖縄・ひめゆりの塔を訪問した中国人学生)

  ▼足を引きずってもいい笑顔

 長野冬季五輪の運営に参加し、国際的イベントに魅力を感じ東京マラソンでもボランティアに応募した。メダル渡しとタイム計測用RCチップの回収を担当し、足を引きずりながらゴールしてくる選手たちの姿に感動した。みなさんの笑顔がとてもいい。

(2008・2 第2回東京マラソンのボランティアの一人、宮下麻里さん)

  ▼お礼のノートに感動

 青函連絡船が廃止になったあと、何度か引っ越しをした。その度に最後の上り便の乗客のみなさんがノートに書いてくれたお礼の言葉を読み返して感動していた。みなさんと再会できたことが夢のようだ。

(2008・3 青函連絡船羊蹄丸の元船長、鈴木繁さん。船の科学館で開催の青函連絡船就航百周年イベントで当時の乗客12人と再会)

  ▼心で通じ合うアウトサイダーアートの世界

 野生的なアートが日本でも大きく広がってほしい。アウトサイダーアートの作者たちは、言葉でコミュニケーションをとらなくても心で通じ合える。

(2008・3 スイスのアールブリュット・コレクション、リュシエンヌ・ペリー館長。滋賀県近江八幡市で開催されたアール・ブリュット展のレセプションで)

  ▼親の責任で社会に通用する人間に

 すべて学校任せにしないで、親が責任を持って子どもを育ててほしい。親が一番子どものことを知っているのだ。すべての親が、子どもを社会に通用するような人間にするのは親の責任であることを自覚してほしい。

(2008・3 戦後30年間フィリピン・ルバング島でジャングル生活をした小野田寛郎さん。鹿児島で開催の小野田自然塾で)

  ▼いかに死ぬべきかを考えるとき

 全国的傾向として、ホスピスが介護病棟化している。家族関係が希薄になりつつある中で医者は患者を一時帰宅させる勇気を持たないといけない。人間にとっていかに死ぬことが大事かを多くの人が考えるべきだ。

(2008・3 滋賀県近江八幡市ヴォーリズ記念病院ホスピス希望館の細井順ホスピス長)

  ▼痛感した力不足

 日本に慣れるまでカルチャーショックの連続だった。2年間の研修を受けて日本の技術に追いついたと思ったが、技術はまだ足りないことが分かった。力不足です。さらに努力が必要と感じている。

(2008・4 2年間の和太鼓研修を終えた日系ブラジル人の国吉フェルナンドさん)

  ▼ろう教育の新たなスタート

 ろう教育にかける先人の大変な苦難やつらい思いが実った。子どもたちは大変喜んでいる。きょうからが新たなろう教育のスタートです。

(2008・4 日本手話を第一言語に日本語の読み書きを第二言語として教える東京・品川の日本初のバイリンガルろう学校・明晴学園の開講式で米内山明宏理事長)

  ▼将来の夢につながる東南アジアの学習

 東南アジアにはさまざまな理由で恵まれない国々がたくさんあり、こうした実情を学ぶことで、子どもたちが将来の夢や希望を抱くことにつながることを期待している。

(2008・4 福島県東白川郡矢祭町立東舘小学校の宍戸仙助校長。アジア教育友好協会の仲介でラオスの小学校とフレンドシップ協定を結んで)

  ▼教えがいのあった素直で明るい子どもたち

 日本にいたころよりもいろいろなことを経験し、楽しい思い出がたくさんできた。子どもたちは素直で明るく、本当に教えがいがあった。機会があれば、また行ってみたい。

(2008・5 技能ボランティア海外派遣協会からシニアボランティアとしてフィリピン・スワルの孤児院・子どもの家に派遣され、1年間活動した大作佳子さん)

  ▼心の痛みが分かるピアカウンセラーとして

 相談者と相談者と同じ心の痛みが分かる経験者として話を聞き、心の支えになるピアカウンセラーをやっている。困難が多いが、つらい気持ちを分かち合い、障害を乗り越え自立を目指す人を支えたい。

(2008・5 生まれながらの脳性まひのため車いす生活を続けながらNPO自立センター・ライフサポート水戸の活動を続ける杉田桂子さん)

  ▼おしんの家のような富山の家

 テレビドラマのおしんの家のような家を見せてもらい感激した。2人のおばあさんから、子どものころから配置薬を使っていると聞いた。日本はこんなに発達しているのに、伝統文化も守っているのだから素晴らしい。

(2008・5 富山の配置薬研修のためモンゴルから来日した医師団のベグズレン・ダグワツェレン医師。富山市内の個人宅を訪問して)

  ▼絵とは何かを考え直す

 第三者を意識しないで絵を描くことが不思議だ。私は何とか自分を出そう、絵とは何かと毎日考えている。そんなことを何も考えずに描き続け、しかも場合によっては描いたものをポイと捨ててしまう人がいる。絵とは何だろうかと、彼らから突き付けられた思いだ。

(2008・5 画家で文化功労賞受賞者の野見山暁治氏。東京汐留で開催されたアール・ブリュット展のオープンフォーラムで)

  ▼計画よりもまず人とのつながりを大事に

 障害者の自立支援施設が独自で収益を上げるのはなかなか難しいが、小さなニーズにきちんと答えていたら大きなニーズにつながった。福祉施設が事業を始めるに当たっては、計画よりも人とのつながりを先に考えるべきだ。

(2008・7 社会福祉法人むそうの戸枝陽基理事長。授産施設の商品開発セミナーで)

  ▼人生の最終章をどう書くか

 自然な形で生き、亡くなるのが在宅ケアのいいところだ。人間はその人の物語を生きており、現代は最終章をどう書くかを模索しながら死を意識する時代だ。

(2008・7 作家の柳田邦男氏。千葉市で開かれたホスピス・在宅ケア全国大会で)

  ▼特別ではない自宅で迎える最期の時

 自宅で最期の時を迎えるのは特別なことではない。在宅での緩和デイケアは家族にとって休息となり、本人は社会性の回復につながる。病気は治せなくとも生活に広がりができる。

(2008・7 仙台市NPO在宅緩和ケアセンター・虹の中山康子さん。千葉市で開かれたホスピス・在宅ケア全国大会で)

  ▼日本にないのは寄付集めの成功体験と習慣

 NPOの中にはいい活動をしているのに、寄付が集まらないのは社会が未成熟だからとか、欧米社会の寄付文化がないからという人がいる。それよりも、日本にないのは寄付集めの成功体験とかその習慣だ。

(2008・8 ファンドレイジング道場主宰の鵜尾雅隆氏。NPOの活動資金確保のセミナーで)

  ▼パン作りは生化学の世界

 菓子は感性の世界だが、パン作りは生化学だ。おいしいパンを作るのは大変で面白い。パン作りの基礎をエチオピアの若者にしつこく、地道に伝えたい。

(2008・9 技能ボランティア海外派遣協会からアフリカのエチオピアに派遣された関一男さん)

  ▼うつ病による自殺者なくす対策を

 悲しみを見つめるだけでは自殺者は減らない。まず大企業がうつ病による自殺者を出さない対策を取るべきだ。働いてうつ病になったら労災認定が必要なのに、認定されるケースは1%にも満たないのはおかしい。

(2008・9 東京・新宿で過労・うつ病で自ら命を絶つあなた展を開催したNPO働く者のメンタルヘルス相談室の伊福達彦理事長)

  ▼今後の人生は自分で考えて

 事件から4年が過ぎて感情のコントロールができ、事件のことは考えないようになった。加害者が今後どんな人生を送ってほしいという注文はない。自分で考えてほしい。被害者遺族の声を加害者の更生指導に生かすよう厚生労働量と法務省は調整してほしい。

(2008・11 長崎県佐世保市で2004年に発生した小6女児同級生殺害事件の遺族で毎日新聞記者の御手洗恭二さん。神戸市内で開催の少年法改正に関するシンポジウムで)

  ▼どんな悩みも隠さないで

 悩みってどこで作るのでしょう。知ってますか。それは心と気持ち!たった2つの見えないものがそんないやなものを作ってしまうのです。時によってはうれしい幸せを運ぶことも、どんな悩みがあっても隠さずに言ってください。悩みを1つ抱えると、10個20個悩みが増えますよ。人生1つ、命1つ。悩み困ったことを抱えて生きるのはもったいない。せっかくもらった命だから楽しく悩みや困ったことのない人生に……!

(2008・11 千葉市で開催された小児がんの子どもたちの絵画展で。静岡県伊東市の石川福美ちゃんの石川ふくみ相談会という作品。福美ちゃんは急性混合性白血病のため8歳11カ月で死去)

  ▼必要な時に教育を

 日本の長岡にはすごい人(米百俵の故事の小林虎三郎)がいた。必要な時に教育を受けさせないと、人材は育たない。ガーナの友人からは、故郷の村の学校を作るのは政府の仕事だといわれるが、それを待っていたら、学校に行きたいという子どもの希望をかなえることはできない。

(2008・11 生まれ故郷のガーナの村に学校建設活動をしている新潟県長岡市在住のオーガスティンA・アウニさん)

  ▼差別された視覚障害者の支えに

 強盗の被害に遭い、失明し顔にはひどい傷が残り死ぬことを考えたこともあった。いまは差別されたカンボジア視覚障害者の支えになるのが私の役割だと思っている。視覚障害者が平等に教育が受けられ、就労の機会が得られるよう努めたい。

(2008・12 カンボジア視覚障害者の自立と社会参加の支援活動をしているブン・マオさん) 

                              (続く)