小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1029 オリオン舞い立つ 流れ星を見た夜

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 日曜(10月21日)の午後10時過ぎ、夜空を見上げた。オリオン座流星群の流れ星を見ることができるかもしれないというニュースがあり、家族みんなで外へ出た。10月も下旬に入ったとはいえ、まだそう寒くはない。40分ほど頑張って1つの流れ星を見た。流れ星は、ほんの一瞬私たちの頭上に現れ、南から北へ流れて消えた。酔眼でも、流れ星だけは、はっきりと見えた。

 数年前、ニュージーランド南十字星を見るため寒さを我慢しながら、夜空を眺め続けたことがある。そのあと夜行バスの窓から星を見続けながらラオスの旅をしたこともある。ともにいい旅だった。満天の星が輝く地域で生まれ、星空は友達のような存在だった。そんなことを思い出しながら懸命に流れ星を探した。

 一瞬姿を見せた流れ星は細い光の筋を引きながら、眼前を横切っていった。私にはその姿が「被災地の人たちよ、頑張れ」とつぶやいているように思えた。 オリオンについては、「冬の星座」(米国の作曲家ヘイズが作詞・作曲、日本語訳詞、堀内敬三)という名曲でも歌われていることを知った。

 メロディは覚えているが、その詞は忘れていた。ネットで調べると、以下の通りだ。

≪1、 木枯らしとだえて さゆる空より 地上に降りしく 奇(くす)しき光よ ものみないこえる しじまの中に きらめきゆれつつ 星座はめぐる

 2、 ほのぼの明かりて 流るる銀河 オリオン舞い立ち スバルはさざめく 無窮をゆびさす 北斗の針と きらめき揺れつつ 星座はめぐる≫

 都市部とはいえ、わが家の周囲は比較的星がよく見える。よく晴れた夏の夜や冬の夜には頭上で星たちがささやき合っているように輝いている。中でも冬のオリオンは、疲れた心と体を癒してくれる。オリオンが舞い立ち、スバルがさざめく夜は、もうそこまできている。

 原発事故で多くの人たちが避難生活を強いられたままの福島では、児童・生徒が県外で一定期間を送る「移動教室」が行われている。北部の伊達市では、NPO団体の補助と市の予算で9つの小学校が新潟県見附市の協力を得て、3泊5日の移動教室を実施した。 放射能を気にせず、自然に親しむだけでなく、他県の学校の子ども達と交流することで、教育的効果は大きいという。

 19日に参院議員会館で開かれた「福島の子どもたちに笑顔を」という集会をのぞき、伊達市教育長の湯田健一さんと伊達市立富野小校長を務める宍戸仙助さんの話を聞いた。 2人は移動教室の意義を詳しく説明し、これからの日本を担う子どもたちのために、移動教室を国の予算で実施してほしいと要望していた。

 福島の子どもたちは、帰るべき「ふるさと」を失いかけているが、移動教室が継続されれば、原風景としての「心のふるさと」が子どもたちの中に形成されるいう宍戸さんの訴えは、熱を帯びていた。 移動教室が今後も継続されれば、子どもたちも気の済むまで星空を見上げることができるはずだ。

 復興予算の流用に頭を使った官僚たちは、福島の人たちの願いを代弁した湯田さんと宍戸さんの言葉に耳を傾けるべきだと思った。 写真はスロベニアの風景。星の輝きも美しいという。