小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

920 姿見せた奇跡の威容 黙して見る白銀の立山連峰

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 先日、富山を旅し、地元の人でもまれにしか見ることができない立山連峰雄大な冬景色に接した。静かな威容は過ぎた年の大震災でくじけかけ、萎えた心にカンフル注射をしたような、生きていることを実感させる劇的な効果をもたらした。(写真をクリックすると拡大して見えます)  

 12日午後、羽田から全日空機は「富山空港が雪のため羽田に引き返すことがあるかもしれない」という条件付きで出発した。案の定、富山空港付近は吹雪状態で除雪しても滑走路に再び雪が積もってしまい、着陸の許可がなかなか出ない。上空旋回すること1時間10分。雪が小康状態になってようやく着陸した。JRにすればよかったと後悔しても後の祭りだった。だが翌13日、冬型の気圧配置が緩み富山は地元の人が驚くほどの好天に一変、白銀に輝く立山連峰がくっきりと私の前に姿を現した。  

 高岡市内の雨晴海岸、帆船・海王丸が公開されている射水市、さらに富山市内の呉羽山などを知り合いに案内してもらった。「これほど、きれいな立山連峰を見ることをできるのは、珍しい」と、多くの人が口をそろえていうのだから、奇跡に近い風景なのだろう。日本にもこのような、手を合わせたくなるような、自然があるのだった。  

 富山市呉羽山展望台は富山市街と背後にそびえる立山連峰の眺望の絶景ポイントといわれている。案内してくれた知人は「ここから撮影した立山連峰の写真は明日の新聞に必ず載るでしょうし、今夜のテレビでも絶対にやりますよ」と、断言した。それほどこれほど美しい立山連峰を見ることができるのは、そうはないというのである。呉羽山には、カメラを持った人たちが集まっていた。時間がない私は、山々が茜色に染まるまで待つことはできなかったが、NHKはこの夜のローカルニュースで、そうした美しい山の姿を映像で流していた。

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 私が立ち寄った雨晴海岸でも、プロの写真家が夕映えの連峰を撮影、朝日新聞に掲載されていた。記事には「夕映え剱岳に雄山の影」という見出しが付き、「夕刻の撮影だったため、ピンク色に染まる剱岳などの山肌に、雄山の峰筋の影が大きく広がった」という説明があり、写真家の「まるで鳥が羽を広げているようで、長年撮影していて初めて見た」という談話も載っていた。  

 アップした3枚は1、呉羽山2、雨晴海岸3、海王丸パーク―から撮影したものだ。人は極度に美しい風景を見ると、言葉を失う。私もこの3つの場所に立って、にわかに失語症になった。願わくば、多くの人が冬の富山を訪れ、立山連峰の雄姿に黙して接してほしい。

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