小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

887 いまも忘れないぬくもり  温風ストーブで思う子どものころ

画像 温風ストーブ(ファンヒーター)で、笑えない失敗をした。急に寒くなり、仕舞い込んでいた灯油の温風ストーブを出した。 給油タンクに灯油を入れ、電気のスイッチを入れた。しかし、ストーブは点火せず「給油してください」という表示が出る。

 何度繰り返しても同じで、給油タンクから固定タンク部分に灯油が出ていないのだ。昨年の冬に購入してからほとんど使っていないのに、もう故障かと思った。 最近の温風ストーブは3年保証が多い。

 保証書とストーブを持って購入した家電量販店に行った。修理の窓口で女性店員に状態を説明しながら、ストーブを見せた。 すると、彼女は「オイルフィルタがないですね。これがないと、給油はしないですよ」というのだ。「え!」と思った。彼女はこんなことも知らないのかと、同情するような顔をしていた。

 そうなのだ。これがなければ給油タンクから灯油は出ない仕組みだったのだ。 冬の終わりに3・11の大震災があった。そして春が来て、ストーブをしまう時に灯油を抜き出したのだが、オイルフィルタも掃除してどこかに置き忘れたらしい。店員の説明を聞いて、機械に詳しいと自称していたことを反省した。

 こんな簡単なことも知らないのだから、恥ずかしい、と。 3・11以降、こうした電気を使う温風ストーブよりも昔ながらの灯油ストーブが売れているという。たしかにホームセンターや家電量販店の店頭ではこのストーブが目に付く。

 冬に災害が発生して電気が止まった場合、においがあってもこのストーブは人々を寒さから救う力になる。 震災当時、停電した東北にいて寒い思いをした家族の一人は、普段は使わなくてもこの冬には灯油ストーブを買いたいと言っている。

 そう思う人が東日本には多いのではないか。 ストーブで思い出すのは子どものころのことだ。家では「まきストーブ」を使い、小学校では低学年のころに「おがくずストーブ」があり、高学年では「石炭ストーブ」になっていた。あのころは本当に寒くて貧しかったはずだ。

 しかし、いまでもあのストーブのぬくもりを思い出すことができる。 ちなみに、なくしたオイルフィルタは520円だった。だが、私がこの値段以上の勉強をしたことは言うまでもない。