小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

881 カンボジアの知人の嘆き 洪水被害続くアジアの国々

 先日、カンボジアの首都プノンペンに住んでいる知人から電話があった。久しぶりに声が聞きたいということで、互いの近況を話しているうち、話題が「洪水」に及んだ。「タイもそうですが、カンボジアの洪水はどうですか」と聞くと「大変ですよ」という答えが返ってきた。

  日本のメディアはタイの洪水だけを毎日報道しているが、周辺諸国も洪水被害が深刻なのだ。

  カンボジアの洪水はメコン川流域や東南アジア最大の湖「トンレサップ」周辺で発生。これまでに200人以上が死亡し、避難世帯は9万世帯、30万世帯の家屋と国内の水田の10%以上が浸水、ここ10年では最悪の被害だという。洪水は拡大している恐れがあり、被害もさらに増える見通しという。

  知人は、日本の精米機メーカーに勤め、カンボジア事務所で働いているカンボジア人だ。まだそう多く普及していない精米機をカンボジア国内で販売することが仕事だから、米の収穫が減ると、仕事にも影響するため、洪水には困り切っているのだ。

  以下は日本の気象庁の発表―。インドシナ半島では雨季に入ったこの夏以降、長期的に降水量の多い状態が続いている。これは夏のモンスーン(季節風)が強まったことにより、インドシナ半島を含む南アジアから東南アジアにかけての対流活動が活発化したことが原因だ。

  6月から9月までの4カ月間の降水量は、チェンマイで921ミリ(平年比134%)、バンコクで1251ミリ(平年比140%)、ビエンチャンで1641ミリ(平年比144%)を観測、インドシナ半島のほとんどの地点で平年の1.2倍から1.8倍の降水量を記録している。今年の初めから降水量が多く、インドシナ半島全体で長期間にわたって降水量の多い傾向が続いた。このためチャオプラヤ川メコン川など半島を流れる河川の水量が増加し続けている。

  モンスーンの活発化は地球温暖化と密接な関連があるとみられるほか、バンコクを含めたアジア諸国の主要都市は海抜が低い場所にあり、洪水対策も十分ではない。公式に洪水被害が報告されているのはタイ、カンボジアのほかパキスタン、インド、バングラデシュ、フィリピン、中国(6月に南部の13省で発生)などだが、日本でも他の諸国と被害の差はあっても大雨・洪水の被害が頻発している。

  洪水は世界の神話の中にも出ており、古代から地球上に頻発していたといっていい。それをどう乗り越えるかは、人類の永遠の課題なのだろうか。カンボジアの知人の電話を終わって、そんなことを考えた。