小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

827 フクシマから届いたいい話 小学校にヒマワリの種

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 原発事故の収束の見通しが立たず、暗雲が消えない福島に住む知人から、うれしい便りがあった。苦境に立つ福島の人々、とりわけ子どもたちを守りたいという思いが、こんな行動につながるのだから、すごい。 それはこんな話だ。

 知人が校長を務める東白川郡矢祭町立東舘小学校に今週月曜日の6日、黄色い封筒が郵送されてきた。裏には、神奈川県藤沢市在住の男性の名前があり、封筒を開けると消毒済みという328粒(20g)のヒマワリの種とヒマワリと放射性物質の関係についての資料のコピーとともに手紙が入っていた。原文のまま紹介すると―。

《福島の小学校の先生、生徒の皆様、はじめまして。私は、神奈川県に住んでいる者です、私も、皆様と同じくらいの子供が2人います。テレビや新聞で見ていてとても気の毒に思っていました。少しでも力になれたらと思い、本やインターネットで調べた所、放射性物質の除去に、ひまわり、菜の花が効果があると知り、ひまわりの種を、校庭に蒔いてもらいたく、種を送りました。 未来の子供達に少しでも害にならないようにと考えてのことです。1日でも早く、福島県の子供達が、もとの生活を出来ることを祈っています》

 喜んだ知人が、つてを頼って調べると、福島市佐原小、川俣町立福田小、郡山市立柴宮小、須賀川市立小塩江小、南会津町立伊南小、北塩原村裏磐梯小、会津美里町立本郷一小、いわき市立永井小、白水小、棚倉町立近津小、塙町立塙小、矢祭町立石井小、関岡小に届いていることが確認され、知人は福島県内5百余の全小学校に贈られていると確信したという。

 知人は「子どもたちがヒマワリの種の贈り主のように、他人の悲しみ、苦しみを自分のことと受け止め、そうした不幸な人に手をさしのべることのできる人間に成長してほしい」と願いながら、1年生と一緒にこの種を花壇に蒔いた。画像

 ヒマワリは真夏に太陽に向かって花を咲かせる。明るくて力強さを感じる花だ。これまでも夏の学校の校庭に珍しくなかったかもしれない。それでも、藤沢の男性の気持ちは尊い。ヒマワリは放射性物質を吸収するといわれており、チェルノブイリ原発事故の現場周辺でも植え付けの実験の結果、効果が実証されたそうだが、放射性物質を吸収したヒマワリをどう処分するかといった課題がある。

 1970年に日本でも上映された「ひまわり」というマルチェロ・マストロヤンニソフィア・ローレンが主演した映画を記憶している。戦争によって引き裂かれた夫婦の悲劇を描いた映画で、地平線にまで続く美しいヒマワリ畑が哀愁を誘った。フクシマの小学校に咲くヒマワリは、明るく咲いてほしいと思う。