小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

785 話題提供の2人のスポーツ選手 雄飛と転身と

  昨今は暗い話題が多い。時代背景なのだろうが、どうせなら明るい話題に接したいと思う。そんな時スポーツをめぐる2人の青年が明るい話題を提供してくれた。

  東京マラソンで3位になり、世界陸上出場を内定した埼玉県職員の川内優輝選手(23)と大相撲を引退し、新聞記者に転身する舛名大(26)=本名・田中周一、愛知県出身、千賀ノ浦部屋=の2人である。

  川内さんについては、多くのメディアは「市民ランナー」と報じている。たしかに、プロといってもいい実業団の選手に比べたら、川内さんの定時制高校の事務員という生活は厳しい環境だ。

  だが、そうした環境をうまく使って彼は並みいる実業団の選手を圧倒した。だが、彼は大学時代、箱根駅伝に2回も出場し、ある程度の成績を収めており、市民ランナーの域を超えた選手といっていい。

  彼の頑張りを見ていると、実業団の選手たちに歯がゆさを感じてしまう。だが、マラソンはそれだけ難しい競技なのだと思う。

  一方の田中さんは、力士としては3段目までしか行くことができなかった。現在各界は八百長問題の渦中にあり、力士の引退は認められない。彼は昨年秋の中日新聞社の記者試験を受験し、見事合格した。

  面接は浴衣姿だったという。受験の段階から引退を決意していたのだろうが、4月に入社するには現段階で引退する必要があり、例外的に引退が認められたという。

  彼は名古屋大学工学部を卒業し、各界に入ったが、三段目89枚目を最高に首のけがで休場が続いていた。中日新聞では相撲の担当記者を目指すそうだが、一般のスポーツ記者が書けない記事を書くことを期待したいと思う。

  2人のことを言葉で表せば、川内さんは世界陸上へと雄飛する存在だし、田中さんは転身と同時に社会人としての再出発だ。

  3月は「別れの季節」である。そして来月は「出会いの季節」と言っていい。人はそんな季節を繰り返しながら、年輪を重ねていくのだ。