751 オリオンと月が輝く夜の散歩道 ことしの旅を振り返る
ことしも残す所8日になった。夜、犬の散歩をしていると、東の空には満月が輝き、暗い道を照らしてくれる。その少し右の方にはオリオンがくっきり浮かんでいる。白い息を吐きながら訪れた「街」を思った。よく歩いたものだと思う。(写真は青森県の十和田電鉄車窓から見た景色)
ことしの旅を振り返る。
2月 〈神戸市・鳥取県米子市〉 〈岡山県倉敷市・広島県尾道市〉
5月 〈鳥取市〉
9月 〈名古屋市〉 〈福島県矢祭町〉 〈スロベニア・クロアチア・イタリア〉
11月 〈鳥取市・米子市・松江市・浜田市〉 〈熊本市〉 〈福島県いわき市〉
12月 〈札幌市・石狩市〉
同じ月に、何回か旅に出ているので、これを合計すると、18回になる。このうち「スロベニア・クロアチア・イタリア」については、このブログでも書いている。国内の旅でも多くの人に出会った。その中の1人を書いてみる。熊本市八代市の松浦ゆかりさんである。以下は別の媒体で発表した松浦さんの話だ。
《熊 本県八代市の松浦ゆかりさんに、最近うれしい知らせがあった。環境カウンセラーに合格したという環境省からの連絡だった。それは5歳という幼い命を交通事 故で失った三男に導かれてここまでたどり着いたようなものだと、松浦さんは思う。子どもを亡くした悲しみを乗り越えるには、長い歳月がかかった。いま松浦 さんは、歩んできた道を振り返り、あらためて環境問題を通じて「いのちの大切さ」を訴えていきたいと考えている。
松浦さんの三男、宅利君は1992年、友達の家の新築祝いに行く途中、車にはねられ亡くなった。まだ5歳だった。その悲しみは深く、生きる希望を失いかけた。その傷を癒そうと、始めた福祉ボランティアが、こんな形に結実するとは・・・。
環境省によると、環境カウンセラーはそれまでの活動の中で取得した環境保全に関する専門的知識 や豊富な経験を市民、NGO、事業者などが実施する環境保全活動に対して助言をする人材として登録される。環境省が実施する審査(論文と面接)を経て、環 境カウンセラーとして認定される環境問題のエキスパートだ。
八代市内で電気器具店の主婦だった松浦さんは、宅利君を亡くした後、児童養護施設・八代ナザレ園や八代乳児院で名札付けやおしめ洗いなどの福祉ボランティ ア活動を始めた。そんな日々を送る中で、環境ホルモンの危険性を警告した米国の「奪われし未来」という本に出会い、「命の安全」について勉強をしたいと 思った。熊本県は、水俣病という公害病があり、松浦さんは「次世代のためにも海や川を汚す行為をストップさせる必要がある」と、環境問題の勉強をしながら ホームページを立ち上げた。
松浦さんが環境啓発活動をするのと歩調を合わせるように、八代市は2001年「環境基本計画書」を作成した。この計画書作成に当たって、市民の意見を取り 入れるため市民環境委員として松浦さんら13人の参加を求めた。そうして、向こう5年間の計画書はできたが、実動部隊がない。そこでこの年8月、13人の うち松浦さんら8人が「次世代のためにがんばろ会」を結成した。
「川や海を汚すのは人間だ。それをやめさせるにはどうしたらいいのかを子どもたちに分かりやすく教えたい」。その活動のアイデアとして、顧問役の八代工業 高等専門学校の先生が、カキの殻には川を浄化する作用があり、実際にカキ殻を川に入れる活動をしている例があることを教えてくれた。幸い、市内の海岸には カキの殻は豊富にある。漁協の了承も得た松浦さんらは、翌年の02年3月、初めて新川にカキ殻をまいた。「カキ殻にあるカルシウムが川の汚れの原因である リンと結合して沈殿する。すると、カキ殻のごつごつした部分にたくさんの微生物が住み着き、川の汚れ部分を分解してくれる。さらないカワニナというホタル のえさになる貝がカルシウムを取り入れて育ち、川底の汚泥を食べてくれので、川がきれいになる」というのだ。
約30人が参加したこの運動は反響を呼び、その後「カキ殻まつり」に発展、市長も参加する八代市の名物行事になった。日本財団も支援したこの環境保護運動 は既に7回を数え、参加者も09年は1000人を超えた。「がんばろ会」は、このほかにも「地球温暖化出前授業で廃油ロウソクをつくる『CO2削減キャラ バン隊』」、「小中学生による水無川の一斉清掃」「子どもたちに環境の大切さを伝える環境学習会」「八代海岸の大掃除大会」「保健所と小学生が合同でゴミ パトロールを行い、ゴミマップを作成する」―など、幅広い活動を続けている。
そんな活動を振り返って、松浦さんは環境カウンセラーに応募する論文を書いた。
論文で松浦さんはまず、環境啓発活動に付き物の3K(きつい、汚い、危険)を伴うことが多い中、「がんばろ会」の周辺には自分の仕事を忘れてしまうほど 3Kが楽しくて、たくさんの人が集まること、さらに、たくさんの団体がつながり、みんなが一緒に「もやい」(共同で何かをやり遂げ、助け合う)の活動を進 めていることを紹介した。
環境意識の啓発を図るためのポイントとして「活動はみんなが主役」「感謝の気持ちを忘れない」「情報発信を常に行う」「世代交流を図りながら若い世代を育 てる」―など8つのポイントを提言。最後に「地道にやっていけば周りの人も必ず認め、楽しく参加してくれる活動になるだろう。地域の人の環境に対する意識 を変え、日本中にこの輪を広げたい」と活動継続の重要性を訴えている。
松浦さんはこうした活動の「接着剤役」を自認してきた。これからは学校に出かけ命の大切さを教える「出前授業」に専念し、活動の前面に若い世代を出したい と考えている。「次の時代を担う人材に育ってほしいと思う」からだ。しかし、環境カウンセラーとしての役割も加わるわけで、忙しい日々から脱け出すのはそ う簡単ではないようだ》