小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

716 「ローマへの道」紀行(7) アルベロベッロの花嫁

画像 今回の旅はスロベニアからクロアチアを経て、南イタリアに入るというスケジュールだった。前回のブログのカプリに寄る前に、船でクロアチアからイタリアのバーリに入ったあと、トンガリ屋根の家が並ぶ世界遺産アルベロベッロを見た。そこで結婚式を挙げる直前の若いカップルに出会った 。20代と思える2人は、カメラを向けると笑顔でポーズをとってくれた。

 アルベロベッロの街は「トゥルッリ」と呼ばれるキノコのような形のとんがり屋根に白い壁の家が集中している。かつて、この街は貧しく住民は石が多く、やせた土地に暮らしていた。15世紀の末にナポリから送り込まれてきた伯爵は、税金をごまかすために税吏がやってきたらすぐ壊せるようにと、解体できる家を農民につくらせた。それが現在の「トゥルッリとなって観光資源の役割を果たす。

 いまでは、金持ちの別荘として使われている家もあり、売買価格は5000万円以上するそうだ。この街の中に教会があり、カップルはここで結婚式を挙げるようだ。花嫁はロングドレスを着て車から降りたあと、ドレスのすそが長くて引きずって颯爽と歩いている。そんなことにお構いなしなのがいい。 背は花婿より花嫁の方が大きい。日本で放送していたNHKの「げげげの女房」のテレビドラマを思い出した。

 ヒロイン役の松下奈緒さんも背が高いからだ。これから結婚式を挙げる2人は、車でやってきたのだからこの街の住人ではないようだ。でも、長い歴史を持つ街の教会で、挙式をする2人は必ず幸せになるだろう。

 2人の輝くような笑顔をみながら、そうなってほしいと思った。 「トゥルッリ」と呼ばれる建物は、街中を通る道路を挟んで両側にある。道路はちょうどすり鉢の底あたりにあり、道を隔ててトンガリ屋根の家が丘の上へ連なる。教会のある方は別荘としても利用されている住宅街で、反対側のモンティ地区には観光客を相手にしている土産物店が並んでいる。画像

 とぼとぼと上り坂を歩いていると、「ニッポン、シラカワゴウ、トモダチ…」と呼びかける男性がいて、店に誘い込まれる。テーブルクロスや花柄のベッドカバーを売っていた。ここは合掌造りの集落が世界遺産になった白川郷姉妹都市だったのだ。画像   

 アルベロベッロのあと、さらにバスに乗って約1時間15分。再び世界遺産の「マテーラ」に着いた。岩山をくり抜いた洞窟の住宅街である。この地方の人々がカルデラ地層を利用して生きてきた歴史をしのんだ。

 スロベニアクロアチア、イタリアを旅してイタリアの街の汚さが目に付いた。建物のことではない。街の清潔さという点では、イタリアはひどいと思った。ゴミ戦争が世界に知られたナポリは、やはり道路のわきにゴミが散乱していた。多くの世界遺産があるのに、これでは「減点だ」と思った。

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