小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

670 国民の選択は 税金増はやはりいやなのだ

  参院選でメディアの予測通り、民主党が「惨敗」した。現有議席を大きく下回ることは確実で、衆院参院の「ねじれ現象」が生じることになりそうだ。昨年の衆院選からまだ1年もたっていない。日本の政治はどうなっているのかと諸外国の人たちは不思議に思うに違いない。菅首相の国民の空気を読めない「KYぶり」がこうした結果になったようだ。

  KYとは、消費税のことだ。国民の多くは日本の借金が900兆という天文学的数字になっているらしいことは知っていても、唐突に消費税を上げるという話には納得ができなかった。税金は安いにこしたことはない。多くの人たちが、その日暮らしの苦しい生活を続けている中で、新聞の一面や経済面には上場企業の幹部たちが1億円を超える年収を得ていることが連日出ていた。中には8億円の人もいて、電車の中で新聞の読む人たちの嘆息が私にも伝わってきた。

  そんな話題が紙面に載る一方で、消費税を10%にすることを議論しようと菅首相はいきなり持ち出した。冷静に考えれば正論だと思う。しかし、日常生活に直結する消費税の話だけに賛同は得られなかった。これに対し他の政党、特に自民党菅首相の言動を批判すればよかったのだから、楽だった。まるでサッカーの「オウンゴール」のようなものだ。

  これまで選挙直前に消費税を持ち出せば、必ず負けるという構図だった。それを菅・民主党は知らなかったのだろうか。あるいは、それを承知の上で菅首相が消費税問題を持ち出したのだとすれば、したたかだ。

  この後その姿勢を貫き続けることができればたいしたものだと思う。(民主党内の反小沢、親小沢グループが対立して党内抗争が起きるという予想もある。そうなると、消費税論争はどこかにいってしまうかもしれない)

  ごく最近まで「ねじれ国会」があった。衆院は自民・公明が過半数を占めたが、参院は民主・その他が上回り、重要法案が成立しないという事態が続いた。しかしそうした法案はどんなものかだれも覚えていない。国民からすれば自分の生活に直結することはなく、逆に自民党・与党の暴走を止める役割を果たしたことで、これでよかったという見方もできる。

  民主党で当選した柔道の谷亮子さんは「国民のために一生懸命に働きます」と言っている。そうしてほしい。どうも、最近の国会議員は国民のためにというより、自分のため、自分の属する党のために動いているように見える。国民からお灸をすえられた、菅内閣はどう進んでいくのか。

  普天間基地問題で、政治不信を高めた沖縄は投票率全国最低だった。沖縄県民は失望の末、選挙に行かないという行動を重視したのだ。菅首相は沖縄の人たちの思いをくみ取る必要があるのだが、それだけの力量があるのだろうか。