小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

657 ムクドリ追い出し作戦 駅周辺の大音響・結果は?

画像 私が利用しているJRの駅周辺で、先月末ものすごい音響がスピーカーを通じて流された。電柱には「ムクドリ対策中」という張り紙があり、この周辺に集まるムクドリの大群を追い払おうという作戦だと分かった。 この音による作戦と並行して、3日間にわたってボランティアを募集しての対策が実施された。

 もともと益鳥といわれたムクドリも、自然環境の変化によって生活の場を奪われ、人間との戦いを強いられるようになってしまった。 ムクドリは日本では珍しくない鳥だ。農作物に害のある虫を食べるので、益鳥といわれた時代もあった。

 しかし、経済の高度成長、列島改造などによって生育環境が破壊され、都市部の街路樹などをねぐらにするようになり、しかも群れをつくって行動する習性から、「ギャアギャア」という鳴き声や大量の糞が問題視され、全国でムクドリ公害が叫ばれるようになった。

 新潟県長岡市がJR長岡駅前の捕獲したムクドリの鳴き声を録音して、これを大音量で流したところ、ムクドリが集まらなくなった。この話を聞いたムクドリ公害に悩む自治体は同じ作戦を実施し、成功したという。わが街のJR駅周辺で流されている音は、区役所の担当者によると、「ムクドリが嫌う音」(危険が迫った時や天敵に捕まった時の悲鳴になるムクドリの忌避音 (ディストレス・コール)と言い、長岡と同種のものだった。

 音による追い出し作戦と同時に実施されたボランティアを集めた対策は、拍子木や竹竿を使ってムクドリを追い払う担当とムクドリの行動を観察し、記録する担当に分れ、作業前には作業方法、ムクドリの習性についての説明会も開催されたという。しかし、こうした手作業ではムクドリと戦うのは難しく、これまで集まっていたところから分散したものの、依然として駅周辺にはムクドリの群れが舞っているのが見える。

 けさ、わが家の庭を見ると、一羽のムクドリが舞い降りてきて、芝生のあたりで虫を食べている。大群の鳴き声は異様だが、一羽なら愛嬌がある。モーツァルトムクドリをペットとして飼っていたらしいが、ユニークだなと思う。 区役所によると、駅周辺のムクドリの数は、昨年は約2万羽いたが、ことしはその半分程度だそうだ。追い出し作戦が功を奏したのか、ヒナのかえりが悪かったためかは分からない。

 しかし追い出し作戦が終わった後も、夕方になると鳴き声がうるさくいくらい集まってきて、まだあの音が流されているのかと勘違いしてしまうほどだ。 都市部では宅地化が進んで緑が少なくなる現象が続いている。住処を追われたムクドリたちは、大きくなった街路樹に集まってくる。

 追い払われても場所を移すだけだ。だから街中から完全に追い払うことは困難で、妙案はなかなか見つからない。私の質問に答える区役所の担当者の声は弱々しかった。