小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

621 4月の雪 自然からの警告

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 けさ、外を見ていたら、雨がいつの間にか雪に変わり、わが家の庭も白くなった。気象の専門家によると、4月としては30年に1回という寒波が日本列島上空を覆ったのが原因だという。

  東京のこの時期の雪は41年ぶりだそうだ。世界では巨大地震が相次ぎ、世界でも有数の火山国アイスランドでは2世紀ぶりに氷河の火山が噴火し、ヨーロッパの空の便はズタズタになってしまった。自然界はやはりおかしくなっている。

  カメラを持ち出し、庭に出て震えながらチューリップの前にうっすらと積もった雪を撮影した。チューリップは寒さに耐えながら花を咲かせている。花に言葉があればどんなことをつぶやくのだろうかと思った。居間に戻り、新聞やテレビのニュースを見ると、中国・青海省の大地震で被害が拡大していることを報じていた。

  知人の夫の読売新聞大木記者が現地に入り、悲惨な様子を伝えている。その報道によれば、現地は海抜約3700メートルの高地であり、中国各地から駆けつけた救援隊員の中には酸欠状態に陥る人も出ており、被災者救援も難航しているという。

  しかも被災者の間では食料やテントは不足し、多くの被災者が布団にくるまって氷点下の夜を過ごした、というから気の毒としか言いようがない。大木記者は、さらに「布団にくるまっていたチベット族の女性が、お湯が手に入らないと言ってカップラーメンをそのままバリバリと食べ、1歳の男児に母乳をあげていたその女性の妹は、食べ物も水も少ないので、母乳の出が悪いと話し、せめて暖かいテントが欲しいと訴えた」と書いている。

  瓦礫の下には、まだ多くの人たちが救いを求めている。中国は震災の区域が集中しているという理由で外国からの救助は求めないことを表明しており、日本の救助犬派遣の申し入れに対しても受け入れるという返事はない。氷点下になるという寒さの中で、命の灯を燃やし続けることには限界がある。一刻も早い救出を願うばかりだ。

  アイスランドでは14日に首都レイキャビクの東約120キロ・メートルのエイヤフィヤトラヨークトル氷河の火山が3月20日に続いて再噴火した。その火山灰がヨーロッパ各地に到達し、20カ国の空港が閉鎖されてしまった。この前の噴火は1821年から23年にかけてだったから、2世紀ぶりの噴火だ。

  ふだん、この国のニュースはあまり聞かない。金融、不動産投資でこの国が国民一人当たりのGDP(国内総生産)が世界5位(06年)になったが、世界金融危機で経済危機に陥り、現在もこの国は苦境にたっている。それに追い打ちをかけるような火山の大噴火であり、アイスランドにとっては試練の春になってしまった。

  人間は自然と向き合って生きている。長い歴史を振り返れば、自然がもたらす脅威=災害にさらされながら英知を集めて乗り切ってきた。しかし、頻発する自然界の異変は、CO2の削減など温暖化対策で露呈している主要国の無責任さ、努力不足への警告と受け止めることもできる。