小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1302 御嶽の噴火に思う 人智を超えた自然の脅威

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 噴火した御嶽は深田久弥の『日本百名山』の60番目に出てくる日本アルプスの中で「別格」の山である。NHKの報道によると、この噴火によって、登山中だった31人が心肺停止状態だという。けが人も多数出ており、火山国日本の自然の脅威を実感する。山で噴火に遭遇していた人たちの無事帰還を祈りたい。

 地元の人には見なれた御嶽の姿だろうが、以前に愛知県の犬山城から見た威容は目に焼き付いている。1年前の2013年1月、犬山城に行った。夕暮れが近づいた犬山城は人影がまばらだった。天守からパノラマの風景を見た。犬山の街の反対側にはゆったり流れる木曽川岐阜県各務原の街並みがあり、その背後には雪を抱いた白い嶺が神々しいくらいにそびえている。それが御嶽だった。

 御嶽について、深田は「斜線がみごとである。厖大な頂上を支えるのに十分な根張りをもって、御嶽全体を均衡のとれた美しい山にしている」とも書いている。犬山城からの眺めは、その斜線が見事だった。もちろん、斜線の美しさは富士山が群を抜いている。

 それにしても、木曽川と御嶽の配置は絶妙であり、私は黙ったまましばらく天守の展望場所に立ち尽くした。 深田は『日本百名山』の後記でこんなことを書いている。  

 日本人ほど山を崇(たっと)び山に親しんだ国民は、世界に類がない。国を肇(はじ)めた昔から山に縁があり、どの芸術の分野にも山を取扱わなかったものはない。近年殊のほか登山が盛んになって、登山ブームなどと言われるが、それはただ一時におこった流行ではない。日本人の心の底にはいつも山があったのである。

 今回、御嶽に登った人たちも山を崇び山に親しんだはずである。だが、噴火の予知は極めて難しいといわれ、火山というものは人智の及ばぬ動きをする畏怖すべき存在であることを忘れてはならない。

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