小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1303 福島から季節の便り 「くだものの宝石箱」の取り組み

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 福島の知人から旬の果物、梨(二十世紀)が届いた。早速いただいた。瑞々しくて、甘い。「2014年 梨園たより」というパンフレットが同封されていた。そのパンフからは、原発事故の影響で苦労する果樹園の姿がしのばれた。

「今年の2月14、15日にかけて、湿った重い雪が降り積もり(50センチ以上)梨の幹が一部割れました。また、冷夏の予想がハズれて、今年も猛暑となりましたが、果物は糖度が上がって、結果オーライでした。今年は希望を出していた福島市の除染モデル事業、樹園地の表土剥ぎを少しでも安全、安心な梨をお届けするため実施しました。線量も半減し、検査結果も別紙の通りです。ご安心ください」

 別紙の「微量放射能検査報告書」には、検査機関による放射線量試験結果が載っており、検査項目のヨウ素131、セシウム134、セシウム137、全セシウム放射能濃度(いずれもBq/Kg)の4つとも「検出されず」と記されていた。

 同封の福島市農政部農業振興課発行の観光案内には、「くだものの宝石箱」と呼ばれ、多くの種類の果物が収穫できる福島市原発事故に対する取り組みが書かれている。

 それによれば、福島市では生産者と出荷団体と連携して、農産物の出荷前に検査機器47台による放射線量の自主検査を実施している。昨年度は196品目2万6496件の検査を行い、検査したすべての農産物が国の基準値を下回った。このうち果物については99・7%が測定下限値(20ベクレル/Kg)以下だったという。

 原発事故は、避難者だけでなく多方面に影響を与え続けている。避難者の大半が帰宅の希望が叶わぬまま、既に事故から3年半以上が経過してしまった。そんな中で、停止していた原発の再稼働の動きが出ている。昨日の夕刊にはこんな記事が出ていた。

 菅官房長官が29日午前の記者会見で、御嶽山の噴火を予知できなかったことが火山の集中地帯にある九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働方針に影響しないとの考えを示した、というのである。会見で記者団が御嶽山の噴火が川内原発の再稼働方針に影響するかと質問したことに対し、菅氏は「ないと思う」と述べ、「今回のような水蒸気(爆発)は、予測が極めて難しいと従来、言われている」と語ったが、新規制基準を満たしたとする原子力規制委員会川内原発の審査結果は見直さないという。

 川内原発は、周辺の火山(半径160キロ以内に桜島など5つがある)が噴火する危険性が心配されており、しかも現在の火山学で噴火の予知は極めて困難というのが学会の定説だ。「観測によって噴火の予知は可能」という九電の主張は根拠が弱い。本当に大丈夫なのだろうか。