小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

601 チリの巨大地震 逆境の政治家の指導力は

 地球の裏側の南米・チリで巨大地震が発生した。1日が経過して日本の太平洋岸に津波が押し寄せてきた。チリの状況はまだ詳しくは分かっていないが、大きな被害が出るのは間違いないだろう。

  チリの女性の大統領、バチェレ大統領が国民に向け冷静な対応と団結を呼び掛けているのをNHKBS放送の特集番組で見た。その中には国際社会の協力に感謝するというくだりもあり、救援の声明を発表した各国の名前を出していた。

  日本のテレビ各局は、津波情報・警報を午前中から流し続けている。1960年5月22日にチリ地震津波があり、岩手県三陸沖を中心に大きな被害(死者・不明142人)を出しているので、気象庁の警報は当然だろう。それに従って沿岸部の住民が避難をした。

  日本政府は27日に鳩山首相と岡田外相名でバチェレ大統領とフェルナンデス外相にメッセージを出したという。その内容は、多くの被災者が出たことに対するお悔やみとお見舞いとともに、今後必要な支援をするというものだ。言葉だけでなく迅速な支援を実行してほしいと思う。

  元外交官の日本人を父親に、チリ人を母親に持つ知人がいる。彼は両親をチリに残して日本に留学し、現在も日本に住んでいる。地震後チリとは連絡が取れにくい状況になっており、彼の両親の安否が心配だ。

  テレビに映し出される地震の映像は、阪神・淡路大震災の被災地を思い出してしまう。中米のハイチでも巨大地震があったばかりであり、この地球で安住の地はないと思ってしまう。

  チリについては、私たち日本人はあまり知らない。知人は「日本のメディアはアメリカに偏り過ぎだ」と言うが、確かに、南米やアフリカについての報道は少ない。

  チリに特派員を常駐させている日本の報道機関は皆無だろう。しばらくは集中豪雨的に地震の報道が続き、チリ=巨大地震のイメージが植え付けられるかもしれない。チリは品質のいい「チリワイン」でも知られている。ワイン産業は大丈夫なのだろうか。

  かつてチリはクーデターを起こしたピノチェトによって、17年間にわたって軍事独裁政権が続くという暗黒時代があった。現在のバチェレ大統領は、父親がピノチェト派に逮捕され、拷問されて死亡、自身も国外に亡命するという過去がある。苦難の青春時代を送っており、逆境に強い政治家のようだ。

  テレビで国民に呼びかける姿を見て、鳩山首相をはじめとする日本の「純粋培養」の二世政治家に比べたら、リーダーシップもありそうだと思った。彼女の強い指導力で、チリが一刻も早く立ち直ることを祈りたい。それは知人も同じ思いだろう。