小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

510 風に乗った1人の女性 民主の磯谷さんの当選

 名簿に名前を載せたばかりに思いもかけず、今度の衆院選挙で当選してしまったという磯谷香代子さん(43)が話題になっている。民主党比例東海ブロックで、公示3日前の8月15日に知り合いの谷岡郁子参院議員(愛知選挙区)から頼まれ、比例単独最下位候補として名前を貸した。ところが、民主党の圧勝という風に乗り、しかも「みんなの党」の重複立候補者が小選挙区の得票で比例復活要件を満さないという風がさらに吹いて、磯谷さんが当選してしまった。

 「当選してしまった」と、書くと失礼かもしれないが、本人は本気で国会議員になろうとして立候補したわけではない。いわばハプニングのようなものだ。落選した自民党の大物たちから見れば 腹立たしいことかもしれない。しかしそういう大物たちがつくってきた選挙制度の結果、磯谷議員が誕生したのである。

 報道によると、磯谷さんはほとんど定職に就いたことはない。そのためか「私なんかが議員をしていいのか」と戸惑っているようだ。その上で「私のように看病や介護で安定した生活を送れない人の力になりたい。負け組側の一人として現状を変えたい」と当選の感想を話しているという。

  小泉改革(ブレーンの竹中平蔵氏は慶応の教授に戻っている)によって、日本は「勝ち組」と「負け組」という格差がつく社会になった。磯谷さんのような市井の片隅で生きてきた人が国民の代表として、国会に出ることは悪いことではない。薬害肝炎訴訟の原告だった福田衣里子さんも民主党の長崎2区で当選した。

 「負け組」の代表ともいえる磯谷さんや福田さんの国会議員になったことは、政治が政治屋世襲議員という「政治のプロ」だけのものでないことを証明した。

  選挙が終わって、日本社会はどう変わるのだろうか。民主党政権公約をどこまで実行できるのか、健全野党になるという自民党は立ち直れるのか、官僚機構は民主政権を支えるのか(あるいは抵抗し、サボタージュするのか)。政権党を交代させた民意は、閉塞感の強い社会を変えてほしいということなのだ。