小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

16 へそ曲がり・頑固が好き

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 知り合いに、自称「無頼記者」を名乗るへそ曲がりの人の本が面白いので、読むように薦められた。知人によると、その人は板垣恭介という古風な名前だ。その板垣さんが先ごろ、ことし初めに出版した本でJCJ日本ジャーナリスト会議)賞を受けた。  

 受賞対象になった本は、まさしくへそ曲がりぶりを吐露したもので「明仁さん、美智子さん、皇族をやめませんか  元宮内庁記者から愛をこめて」(大月書店刊)と、斜に構えた題名だ。ことし春前までは皇室典範の改正が論議された。皇太子に男子が生まれず、秋篠宮も子どもは女だけとあって、将来は女性・女系天皇容認に踏み切る必要性が高まったからだ。  

 ところが、秋篠宮の紀子夫人が3人目の子どもを妊娠し、しかも今月6日に長男(悠仁命名された)が誕生したことで、皇室典範改正論議はタブーになったのである。板垣さんは本の中で、自身の体験から、皇室典範改正以前に「いまの日本で天皇制、皇室は必要なのか」と問いかける。板垣さんは剣道の高段を持ち、背筋を真っ直ぐに伸ばして歩く。時折斜に構えた物の言い方をする。かなり早くから白髪が目立った。そして、相手がだれであろうと、平静さを失わない。  

 宮内庁担当時代には、記者会見の際に美智子皇后(当時は皇太子妃)にたばこの火をつけさせたりした。(本の中にこのエピソードも盛り込まれて、最近週刊朝日でも紹介されたという)斜に構えたという表現をしたが、知人の話では実は彼の本質は生真面目そのものであり、この本も題は奇抜だが、内容そのものは真っ向から振りかぶった皇室論といえる。  

 板垣さんんは無頼のまま自分の意思を貫き通したために、組織人としては不遇だった。しかし、いまかつての無頼記者は意気軒昂なのである。私もこれまで出会った人の中で、頑固というイメージの人が2人いた。本人たちは、恐持ての言動をしながら、実はいずれも読書を好み、人間として「常識や良識」を大事にしていた。彼らのように、時代に迎合せず、自分の意思を貫き通す生き方を私も目指したいと思う。 (9.25)