小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

日常

1270 hana物語(12) 私は末っ子

hanaは小さいころからわが家にしばしば遊びにやってきていたので、3歳過ぎてからわが家に移り住んでもすぐに慣れてしまった。当時、わが家は私と妻、2人の娘の4人暮らしで、hanaは3番目の娘、すなわち末っ子のような存在になった。 外で飼うこと…

1269 hana物語(11) 一度だけの失敗

この文章を書いている私の部屋では、CDから静かな曲が流れている。ヨーゼフ・ハイドンの交響曲44番≪悲しみ≫(哀悼)だ。ハイドン自身が気に入っていた曲で、葬式には演奏してほしいと希望し、1809年にベルリンで行われた追悼際では第3楽章・アダー…

1268 hana物語(10) 私のお母さん

2013年8月5日は、hanaの初七日だった。犬に対しこんな言葉を使うことが適切かどうか分からないが、それまで居間に置いた遺骨と写真を床の間に移した。いずれ土に還す予定だったから、より大切にしたいと思ったからだ。 その夕方、hanaとの散歩…

1267 hana物語(9) 後輩ハナとともに

hanaが旅立ってから、朝の散歩はやめた。その代わりに始めたのがラジオ体操だ。自宅から約200メートル離れた遊歩道の一角に大きな円形の花壇があり、その周囲が広場になっている。ここで近所の人たちが毎朝6時半からNHKの放送に合わせてラジオ体…

1266 hana物語(8) 奇跡の犬

hanaが肝臓がんと診断されたとき、家族全員が間違いであってほしいと願った。しばらくすれば元気を取り戻してくれるのではないか、hanaの散歩の際に度々出会った先輩犬のラブラドールレトリーバーのように、「奇跡」が起こるのではないかと思ったの…

1265 hana物語(7) 短い命を燃焼

人間と飼い犬の強い結びつきは「忠犬ハチ公」の話でよく知られている。飼い主が愛情をかければ、犬にもそれがよく伝わるということなのだろう。 以前読んだ、モンゴメリーの『アンの娘リラ』(新潮文庫・村岡花子訳)という小説の中にもそれを示すエピソード…

1264 犬と猫の受難の話 盲導犬が刺される時代……

最近、新聞に載った「盲導犬がけがをさせられた」という投書と友人がフェースブックに書いた「人を怖がる猫」の話が気になった。「犯罪や事件は時代を映す鏡」といわれるが、2つの動物虐待の事件は、21世紀前半の日本の姿を反映しているようで、暗澹とす…

1263 hana物語(6) 家族として生きた証

ゴールデンレトリーバーは、「金髪の回収犬」という意味があるそうだ。ハンターが撃ち落としたキジなどの獲物をくわえて、主人のもとへ運ぶ役割を担っていたのだ。それが物を拾うことが好きという習性となり、投げられたボールや棒を取ってくる遊びが大好き…

1262 hana物語(5) それぞれの旅立ち

hanaの闘病と死に対し友人からメールやブログへのコメントの形で多くのメッセージが寄せられた。前に書いたが、友人の一人からは「シリウスへの旅立ち」というメッセージをもらった。心のこもった便りの数々は、hanaにも伝わったに違いない。その中…

1260 hana物語(4) 別れの時

私は2006年からブログに興味を持ち、「小径を行く」という題名のブログを書き続けている。このブログでは、時々「hanaのつぶやき」と題して、hanaにまつわる話を登場させてきた。犬にどこまで思考能力があるかどうか議論が分かれるかもしれない…

1259 hana物語(3) シリウスへの旅立ち

hanaとの別れは突然やってきた。夜、息が荒くなったhanaを心配し、次女が居間に布団を運んできて隣で寝たが、次女自身、こんなに早く別れがくるとは思わなかっただろう。 hanaの様子が落ち着いたのを見て、家族は夜11時過ぎには消灯し、就寝し…

1258 hana物語(2) 第1章 思い出の日々 病に倒れて

動物病院でhanaの肝臓に腫瘍が見つかった翌日から、エサは医師の指示で少量ずつを4、5回に分けて食べさせ始めた。しかしドッグフードをエサ用の容器からでは食べようとせず、私たち家族の掌に乗せると、少しだが食べてくれた。散歩にも出る気力はある…

1257 hana物語(1) あるゴールデンレトリーバー11歳の生涯 はじめに

わが家の飼い犬だったゴールデンレトリーバーのhanaが死んで1年が過ぎた。毎日写真では見ているが、最近は夢にも出てくることは少なくなった。そこで、hanaと暮らした日々を思い出すために、あらためて「hana物語」を掲載することにした。(昨…

1256 はびこる「緑の怪獣」 繁殖力旺盛なクズがイタズラ・注意看板を覆う

朝の散歩の途中、調整池の周りで写真のような看板を見た。看板には「かいだんちゅうい あぶない!」の文字と、青い体をした伝説の生き物・カッパらしいものが池にはまっている。その看板をツル性の植物がぐるぐると巻きつき、怪しい雰囲気を醸し出している。…

1254 ペットとともに暮らす時代 「犬」論議に思う

大阪府泉佐野市が犬の糞の放置対策のため導入を検討していた「犬税」について、断念する方向だというニュースを見た。こうした苦肉の策を考えたのは、犬の糞害が相当ひどいということなのだろう。私の散歩する道でも相変わらず糞が放置されているのを見かけ…

1238 一面が白い幻想の世界 ノイバラ咲く調整池

散歩コースに調整池があることは、このブログで何回も書いている。周囲が1周1キロほどの散歩コースになっていて、すり鉢状の底の部分に池が3分の1、残りが雑草地帯(野原)になっている。雑草のほかにいつの間にか雑木も育ち始め、現在は一面白い花のノ…

1236 薔薇が咲く季節 香りに誘われて…

薔薇の季節になった。薔薇好きが高じて、バラ園を運営しながら句作を続けた俳人がいる。長い間、俳誌「みちのく」を主宰した原田青児(2013年1月、94歳で死去)である。作家で俳人の倉阪鬼一郎が原田のことを「薔薇の俳人」と呼んでいるように、原田…

1235 キジバトその後 巣作り終えてひなを待つ

キジバトの話を先週のブログに書いた。5月7日にキウイフルーツの木の間に巣作りを始めたハトたちは、しばらくは午前中の短い時間しか巣にいなかったが、いつのまにか完成し、卵を産んだのか11日からは終日、巣の中に必ず一羽がいるようになった。平和の…

1224 観桜のころ 花の冷えと花の重さの下で

花の冷えと花の重たさの下をゆく―。中央公論の名編集長として知られた俳人篠原梵の句である。山本健吉はこの句について「らんまんと咲いた花の下を行く。その冷えと重さを感じながら―。言い方に近代風の機知が感じられる」(句歌歳時記・春、新潮社)と評し…

1222 さまざまの事おもひ出す桜かな 東京を歩いて

「さまざまの事おもひ出す桜かな」。芭蕉45歳(1688年)の時の句である。桜が満開になった先日、こんな思いを抱きながら東京の街を歩いた。 書店に行くと、「ウォーキング」に関する本がかなり並んでいる。のんびり歩く散歩に比べ、同じように歩くことでも…

1183 ネパールコーヒーと焙煎 冬至過ぎ赤く熟した実

私の部屋に観賞用のコーヒーの木がある。娘がかなり前に小さな苗木をもらってきたのが、いつの間にか1メートル60センチ以上に伸び、このところ毎年実をつけるようになった。ことしもコーヒーの実が色づく季節になった。オリーブよりもやや大きめで緑色か…

1182 たった一枚の写真でも すがすがしさとおぞましさ

たった一枚でも写真の力は大きい―。そんなことを考えながら、日本橋三越で開催中の2013年報道写真展(東京写真記者協会主催)のグランプリ作品「見せましょう!日本の底力を」を見た。 一方、同じ写真でも北朝鮮が国営メディアを通じて公表したNO2・…

1181 デジカメ過剰撮影時代のマイナス効果 旅の記録と記憶

カメラといえばデジタルカメラの時代で、フィルムカメラを使うのは写真のプロか、一部の愛好者しかいないといっていいだろう。そんな時代、だれもが枚数を気にせずシャッターを切る。旅先で数多くの写真を撮影してしまい、あとでどれをプリントしたらいいか…

1162 鳥威(とりおどし)の季節 寒露は名ばかりの暑さ

24節気のうちの「寒露」が過ぎたばかりだ。露が冷たく感じられてくるころのことを言い、空気は澄み、夜空にさえざえと月が明るい季節(東邦出版・日本の七十二候を楽しむ、より)だという。それにしても、ここ数日、真夏が戻ったような暑さが続いている。…

1158 hana物語 番外編3 中秋の名月を一緒に見る

今夜は旧暦8月15日の満月で「中秋の名月」だった。15夜とも呼ぶ。この夜に月が雲に隠れて見えないことを「無月」、雨が降ることを「雨月」というそうだが、幸い、このところ好天が続き、今夜も名月が私たちの頭上に輝いた。 庭に出ると、肌寒い。han…

1156 hana物語番外編2 台風接近の中での別れ

台風18号が接近している。きょう15日は朝から強い雨が降っていた。だが、昼近くから晴れ間がのぞいた。hanaの49日には少し早いが、床の間に飾っておいた遺骨を庭に埋めてやることにした。いわば「埋葬」である。その場所は、前から決めていたよう…

1153 hana物語番外編1 白露の季節

はな、ありがとう。 はなが来てくれたおかげで 私たちの世界が広がって 豊かな毎日になったよ。 一緒にお散歩することで 花の香りや季節の変化を感じたり。 人間以外の動物がかわいいと 思えるようにもなった。 はなには感謝することばかりです。 また会おう…

1150 ラジオ体操の効用 被災地ではおらほの…

飼い犬がこの世を去ってから、朝の散歩の代わりに始めたのがラジオ体操だ。近所の公園前の遊歩道の広場で町内会の有志が中心になって始まったのが、いまでは50人近い集まりになっている。 8月初めから参加してちょうど1カ月が過ぎ、ようやく体も慣れてき…

1154 hana物語 あるゴールデンレトリーバー11年の生涯(20)完 輪廻転生~いつの日か

「輪廻転生」。霊魂がこの世に何回も生まれ変わってくるという意味で、多くの宗教でこの考え方が存在するという。私は突き詰めて考えたことはなく、信じてもいないのだが、なぜかhanaが生きている間から「この子は今度生まれ変わるとしたら私たちの子ど…

1153 hana物語 あるゴールデンレトリーバー11年の生涯(19)月命日・猛暑が続く中で

hanaがこの世を去って1カ月が過ぎた。hanaが死んだのは7月30日だから、きょう8月30日は「月命日」ということになる。 仏教用語では「祥月命日」という、一周忌以降の故人の亡くなった月日(命日)と同じ月日のことを指す言葉もあり、ややこし…