小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

ニュース

894 幸せとは ノルウェー・福井・ブータンの共通項は

ことしほど、人間の幸せとは何だろうと考えさせられたことはない。東日本大震災によって、多くの死者・行方不明者を出し、さらに東電福島原発の事故でいまも福島県の人々の多くが未来を信じることができない避難生活を余儀なくされている。 そんな中で2つの…

890 プロ野球と民放  BSでしか見られないファイナル・ステージ

民放のTBSグループが、所有していたプロ野球球団、横浜ベイスターズを「モバゲータウン」というインターネット上のゲームサイトを運営するディー・エヌ・エーに譲渡することが決まったというニュースを見た。 同じ夜、プロ野球のセ・パ両リーグともファイ…

888 バンコク水害の深刻度  簡単ではない自然との共生

いま、街が洪水に浸かってしまったタイのバンコクに1度だけだが行ったことがある。家族の1人に猛烈なタイファンがいるので、そんなにいいところなのかと思いながら同行したのだった。(焼畑農業の現地) 数日間の滞在で、バンコクとチェンマイ周辺、映画の「…

882 宝の海を奪われた三陸の海女さんの話 でも「まだやれる」

東日本大震災は、三陸の漁場を荒涼たる海に変えた。宮城県石巻市の牡鹿半島西南に位置する網地島(あじしま)沖合にも多くの遺体が流れてきたという。この島に住み、宮城県内で歌謡教室の先生をやりながら海女を続けている小野寺たつえさんに、最近話を聞く…

881 カンボジアの知人の嘆き 洪水被害続くアジアの国々

先日、カンボジアの首都プノンペンに住んでいる知人から電話があった。久しぶりに声が聞きたいということで、互いの近況を話しているうち、話題が「洪水」に及んだ。「タイもそうですが、カンボジアの洪水はどうですか」と聞くと「大変ですよ」という答えが…

880 持続するのか日本人の伝統的価値観 スペイン皇太子賞の福島を救った人たちに学ぶ

東電の福島第一原発事故発生後、被害拡大防止に取り組んだ原発作業員、消防士、自衛官らにスペインのアストゥリアス皇太子賞が贈られた。個人を特定せずにこられの人たちが平和部門受賞の対象になり、代表5人がスペイン北部のアストゥリアス州の州都オビエ…

879 独裁者カダフィの末路 歴史は繰り返すのか

40年以上も独裁者として君臨してきたリビアのカダフィ大佐が死んだ。身柄を拘束され、トラックで護送する途中の銃撃戦で被弾したのが致命傷になった。反カダフィ組織に身柄拘束されたとき、彼はコンクリートの穴の中に隠れていたという。独裁者の哀れな末…

878 流言飛語と風評被害 原発事故をめぐって

また寺田寅彦のことに触れるが、「流言蜚語」(現在の表記は流言飛語)というエッセーがある。 いまから73年前の大正13年(1924)9月、東京日日新聞に掲載された問題提起である。前年の1923年(大正12年)9月1日の関東大震災後「朝鮮人・中…

859 山岳鉄道に乗って 北欧じゃがいも紀行・4

懐かしい歌の部類に入るが、「高原列車は行く」という曲がある。「汽車の窓から ハンケチ振れば 牧場の乙女が 花束投げる 明るい青空 白樺林 山越え谷越え はるばるとララ…… 高原列車は ララ…… 行くよ」という詩がついている。1954年(昭和29)のヒッ…

855 被災地3県の県民性 探究心、向上心強い福島

東日本大震災で特に被害がひどかった東北の岩手、宮城、福島3県の被災者に対し、国内外から礼儀正しく、忍耐強いと絶賛の声が上がったことは、ここで書くまでもない。その背景には何があるのだろうか。文春新書の「県民性の日本地図」(武光誠著)を読んで…

854 未知数の大臣たちへの不安 5人は初耳の野田内閣

夕刊を見て、ショックを受けた。野田内閣の新しい大臣の顔ぶれが載っている。18人の顔写真とともに、経歴が紹介されていた。そのうち朝刊に載っていた藤村修という官房長官を含めて5人が全く知らない人物だった。 政治に無関心ではないが、こんな人がいた…

852 言葉を扱う政治家なのに 民主党代表選の記者会見を見る

菅首相が正式に辞任を表明し、次の首相を決める民主党の代表選が29日に実施されるという。5人の候補者が日本記者クラブで会見しているのをテレビで見た。 民主党で依然力を持っているという小沢、鳩山両氏が支持を打ち出した海江田万里氏(辞任の時期を失し…

851 甲子園に響いた日大三高の校歌 作詞者山本正夫の孫の思いは

夏の甲子園・高校野球全国大会で、東京代表の日大三高が青森代表の光星学院を11―〇でくだして優勝した。「見よや 麗わしの誠の光昇る旭日に ほのぼのと・・・」という(小林大次郎作詞、山本正夫作曲)日大三高の校歌をテレビで聞いた。 負けた光星の選手…

849 不文の約束ごとから遠い日常なのか 被災地の木を使った平泉大文字

民俗学者の宮本常一が「不文の約束ごとが守られることで民衆の社会は成り立つものである。人が人を信じられるのである」という言葉を残したことはこのブログでも紹介したことがある。しかし、昨今、この約束ごとが守られないことが多すぎる。権謀術数をめぐ…

846 夏の過ごし方 「ながら」は無用の節電の日々?

夏になると、毎年のように電気は大丈夫か、水不足にはならないのかがニュースになる。いまのところ水不足は心配ない。では電気の方はどうなのか。私を含めて、多くの人たちが電力不足を気にしながら、暑い夏を送っているのではないか。 7月1カ月で見る限り…

843 日本再生のシンボルに 女子W杯優勝の金字塔

ドイツで開かれていたW杯の女子サッカーで「なでしこ」日本チームが米国をPK戦の末に破って優勝した。東日本大震災で元気をなくした日本復興の象徴ともいえる快挙だ。眠い目をこすりながらテレビを見た。 延長戦後半、2-2になったあと、終了間際に米国…

841 歯車が狂うと・・・ 想像力の欠如、それとも確信犯?

腹を立てるのは体に悪いといわれる。できるだけ笑顔で過ごすことが健康を維持する秘けつでもあるそうだ。それを知りつつ、最近腹を立てることが少なくない。 東日本大震災と東電福島第一原発事故の国や東電の対応には「憤激」という言葉を使わざるを得ないほ…

836 原子の分裂という宇宙の根源的な力 APの歴史にみる原爆報道

米国の通信社・APの、社史ともいうべき「BREAKING NEWS」(ブレーキング ニュース)=AP通信社の記者たちは戦争、平和、世界のニュースをいかに取材してきたか=という本が新聞通信調査会から届いた。1940年以来67年ぶりにAPの歴史…

832 暗い街に住む魔物とは 痛んだ被災者の心を癒すには

東電福島第一原発事故の収束の見通しさえはっきりしないのに、海江田万里経済産業相が突然、全国の原発の安全宣言を行い、再稼働を促したことに対し、原発を抱える知事たちから批判、反論が続出している。原発がない大阪の橋下徹知事でさえ「無責任だ。経産…

826 松坂と職業病 勤続疲労にどう付き合うか

大リーグ・レッドソックスの松坂大輔投手が野球選手生命の危機になっていると報道された。右腕肘靭帯を痛め、修復手術を受けることになったという。 かつて、野球の投手が肘を故障すると、ほぼ野球生命を断たれた。投手にとって肘の故障は肩を痛めることと同…

824 鈍感な国会議員たち 想像力の欠如を露呈

鈍感で想像力に欠け、聞く耳を持たない人たち―。最近の国会の動きをみていると、こんな言葉に集約されるのではないかと思う。自民、公明、たちあがれ日本の3党が今夕、菅内閣の不信任決議案を提出した。民主党の小沢グループも同調するらしい。それに対し、…

821 危機的状況で人間の本性が 原発事故をめぐる言動を注視

東京電力福島第1原発1号機の海水注入が一時中断したといわれた問題の国会での質疑を「不毛の議論」だと、先日のブログに書いた。一刻も早く暴走する原発を制御し、避難している多くの住民に、家に帰ることができるという「希望」を与えることの方が今は優…

819 救世主がいない政界 落第続きの菅氏の1年

菅直人氏が94代の総理大臣に就任したのは2010年6月8日だから、あと2週間で就任1年になる。時間の流れがいかに速いかを実感するとともに、彼がこの1年、一体何をやったのかと考える。 就任直後の唐突な消費税増税発言が影響して、7月の参院選は民…

818 美しい言葉をつかまえたい 想像力を失うと・・・

推理作家・笹沢左保の父親で詩人の笹沢美明(1898―1984)は「言葉」という詩を残した。長い詩なので、冒頭から一部を紹介する。 わたしは ときどき言葉をさがす、なくした 品物を さがすときのように、 わたしの頭の戸棚は混雑し 積まれた書物の山は…

814 福島原発・3つの重い言葉 「闇の中の一筋の光」

知り合いの小学校の校長先生からメールが届いた。東京電力福島第1原子力発電所の1号機が地震直後に炉心溶融(メルトダウン)していたことが判明し、高濃度の放射性物質が検出され「計画的避難区域」に指定された飯舘村と川俣町山木屋地区では15日から住…

813 世界遺産へ近づいた平泉 ≪紅葉燃ゆ 旅立つあさ≫を想う

国際記念物遺跡会議(ICOMOS、イコモス)が平泉(文化遺産)と小笠原(自然遺産)を「世界遺産」に登録するよう勧告し、6月には「人類が共有すべき顕著な普遍的価値を持つ遺跡、景観、自然」の仲間入りをする。 平泉は東日本大震災被災地の岩手県にあり、世…

812 福島原発大事故の悲劇を予言 広瀬隆の「原子炉時限爆弾」

「原発の大事故は起こり得る。大事故が起これば日本はほぼ壊滅する。その可能性が最も高く、こわい原因として大地震が考えられる」―。昨2010年8月に出版された「原子炉時限爆弾」という本で、広瀬隆は、今回の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事…

811 風評被害を助長させないで 福島・宮城にて

連休後半に福島と宮城に行ってきた。東日本大震災被災地のボランティア活動を続ける人たちに出会った。同じ東北なのに福島は暖かく、仙台周辺は肌寒かった。菅首相が中部電力に対し、浜岡原発の全面停運転中止を要請したと発表したのはこの最中だった。福島…

810 何が真実なのか  収束しない原発事故をめぐって

収束の見通しが立たない東電福島第一原発事故に絡んで、朝日新聞の朝刊に2人のインタビュー記事が掲載されていた。 一人は元東電副社長、元参院議員で現在東電顧問の加納時男氏、もう一人は自民党の現職衆院議員、河野太郎氏だ。原発維持(加納氏)と原発廃…

806 「南相馬からの便り」 普通の日常を奪った原発事故

東電福島第1原発の事故で、周辺住民は避難を余儀なくされ、不安な日々を送っている。そんな深刻な日常を強いられた1人の女性からの訴えの文章を以下に掲載する。原発事故は普通の生活を多くの人から奪ってしまったのだ。この文章を市民だけでなく多くの政…